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山田も離脱、主力不在の非常事態も……逆転CSへ合言葉は「下町スワローズの魂見せる!」【新・燕軍戦記#29】

畠山和洋、川端慎吾、雄平に続き、チームの看板である山田哲人までが故障で離脱。まさに非常事態に陥りながらも、今月に入って4カード連続で勝ち越している東京ヤクルトスワローズ。そのナインには今、合言葉が存在するという。

2016/08/17

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鵜久森「みんな目の色を変えてやっている」

 山田の離脱後は三番を打つ西浦は、入団1年目には「新人の開幕戦プロ初打席初球本塁打」という史上初の快挙を成し遂げながら、その後は伸び悩んだ。昨年までの一軍出場は、2年間で計40試合。それが今年は7月に正遊撃手・大引啓次の離脱で代役に起用されると、その大引の復帰と時を同じくして今度は川端が故障。またも思わぬ形で出番が巡ってきた。

 現在は山田の代わりに二塁を守る4年目の谷内も、昨年までの一軍出場は通算53試合のみ。今年は春先、打率.500(26打数13安打)と打ちまくりながら、4月19日の阪神戦(甲子園)で藤浪晋太郎から左手に死球を受け、尺骨を骨折。およそ3カ月のリハビリを経て、8月7日から一軍に復帰したばかりだった。

 どちらも本職は遊撃手。だが、降って湧いたようなこのチャンスをモノにしようと、必死に結果を求めている。西浦は12日の試合では8回に決勝の4号ソロを放ち、今月2度目のお立ち台に上がった。谷内は12日に7回に中前打で同点の足がかりを作ると、翌13日は4回に右前打で追加点をお膳立て。守備でも再三の好プレーを見せている。若手の奮闘に、真中満監督も「必死に戦っている姿は頼もしく感じる。1試合1試合、成長しているのが伝わってくる」と目を細める。

 若手だけではない。12日の試合では、およそ2カ月半ぶりに一軍に昇格したプロ12年目の鵜久森が、2回に巨人先発の右腕・江柄子裕樹から先制の適時打。「トライアウトで来て、なんとかっていう思いでやってる選手。その辺は買いたい」という真中監督のスタメン起用に、見事に応えた。

 昨年まで在籍していた北海道日本ハムでは、相手が左投手の時に起用されることの多かった鵜久森だが、翌13日も右投げの大竹寛に対してスタメン出場。ヤクルトが1対0とリードした4回裏の攻撃では、カウント2-0から外のスライダーを叩きつけて、ショートゴロで貴重な2点目をもたらした。

「(自分が)犠牲になろうと思いました。風も逆だったし、甘いところには来ないと思ったんで、カウントは良かったんですけどゴロを打ちに行きました。内野も(後ろに)下がってましたし、仮にゲッツーでも1点入ると思ったんで。まだ1点しか入ってなかったですし、取れる時に1点でも取っておきたかったですからね」

 主力がいない分、より一丸となって「つなぐ意識」で1点を取り、1点を守った結果の3連戦勝ち越し。それこそが「下町スワローズ」の野球だと鵜久森は言う。

「いろんな役割があって、『打ちたい打ちたい』だけが野球じゃない。つなぐ気持ちで『下町スワローズ』って言ってるんじゃないですか。みんな今がチャンスやと思ってるし、目の色を変えてやってるのはいいんじゃないですかね」

 地味ながらもコツコツと借金を返していけば、CS出場も夢ではなくなってくる。昨日、8月16日から始まる予定だった3位・DeNAとの3連戦は台風接近の影響で初戦が中止となったが、そういう意味では残る2試合が非常に大事。山田がいなくても、川端や畠山、雄平がいなくても、チーム一丸で戦う「下町スワローズ」の姿を、しっかりとこの目に焼き付けたい。

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