今宮健太、後輩のために潜在能力を爆発させた圧巻の10球。「絶対に負け投手にしたくなかった」【夏の甲子園の記憶】
今や福岡ソフトバンクホークスの不動の遊撃手となった今宮健太。高校3年の夏、眠っていた潜在能力を遂に爆発させた。
2016/08/20
高校3年で見られた今宮の変化
今宮に変化が見られたのは高校3年の夏からだった。
走塁のやる気のなさは変わらずだったが、初戦の興南戦では、劣勢の試合展開から、8回に口火を切る二塁打を放ち、後続の適時打で同点ホームを踏んだ。当時2年生だった島袋(ソフトバンク)を打ち崩す痛烈な打球だった。2回戦では秋山拓巳(阪神)と対戦。投手として、怪物と言われた男に投げ勝った。3回戦では同じ150キロ右腕と騒がれていた庄司隼人(広島)と対戦、これも勝利した。
その才能を発揮したと同時に感銘を受けたのは、彼のコメントだった。
必ずといっていいほど、相手を称えていたのだった。
秋山についてはこんな風だった。
「以前から対戦したいと思っていたピッチャーでした。彼の得意球のストレートを狙っていきましたが、個人的には完敗です。あんな重い球は初めてです」
その謙虚な姿勢は、いいかげんなプレーや、やんちゃに見える立ち居振る舞いとは違って、彼の精神性の成長を感じさせるものだった。
そして、準々決勝戦。
センバツとの再戦となった花巻東との戦いで、今宮は眠っていた本能を見せた。
花巻東はエース・菊池が先発し、今宮もマウンドに立った。しかし、4回3失点を喫すると、今宮は一度、三塁へ着いた。
試合は点の取り合いになり、明豊のリードで9回表を迎えたが、花巻東の反撃を浴びて同点に。その時のマウンドには、1学年下の山野恭平(元広島)が立っていたのだが、試合が同点になると、その山野がマウンド上で半べそをかいて泣きだしてまったのだ。