山田哲人強行復帰がもたらした変化。『下町スワローズ』終了も『東京ヤクルト』で逆転CSへ【新・燕軍戦記#30】
川端慎吾、畠山和洋、そして山田哲人といったスター選手を軒並みケガで欠いた東京スワローズにあって、ファンに夢を与えた「下町スワローズ」は、山田の復帰で終わりを告げた。ここからは「花形」も「下町」もない。選手一丸となって逆転CS進出を狙う。
2016/08/28
「これからは『東京ヤクルトスワローズ』で頑張ります」
「『下町スワローズ』はもう終わりました。ビジターでボコボコにやられたので……」
5対2で快勝して連敗を4で止めた8月24日の中日戦(神宮)後、ヤクルトの今浪隆博はそう話した。
「これからは『東京ヤクルトスワローズ』で頑張ります」
今浪が笑みを浮かべながら続けた理由はただ1つ。この日からチームの看板である山田哲人が、およそ2週間ぶりに戦列に復帰したからだ。
下町スワローズ──そう名付けたのは、今季からヤクルトの一員となった坂口智隆だった。畠山和洋、川端慎吾、雄平に続き、8月10日には山田までが左第八肋骨骨挫傷で離脱。生え抜きスター不在の状況に「『東京』って名乗れるほどの花形はいない。オレらは『下町スワローズ』だ」と言い出したのだ。
「下町スワローズの魂を見せてやろうぜ!」
これが合言葉となり、残された選手たちは奮起。入団3年目の西浦直亨、4年目の谷内亮太、それにトライアウトを経て今季からチームに加わった鵜久森淳志など、これまであまり出番に恵まれなかった選手の活躍もあり、山田が抹消された8月10日から4連勝するなど「魂」を見せた。
だが、19日からは敵地・マツダスタジアムで首位・広島に3連敗。特に20、21日の2試合は計3安打に抑え込まれて連続完封負けを喫するなど、昨年のタイトルホルダートリオ──首位打者・川端、打点王・畠山、本塁打王・山田の3人をそっくり欠いたまま戦うことの限界も感じさせた。
そんな中、24日に山田が復帰。チームきっての花形が戻ってきた以上、もう「下町」を名乗る必要はない──。冒頭の今浪の言葉には、そんな意味が込められていた。
ただし、その山田も決して万全な状態で戻ってきたわけではなかった。7月30日の巨人戦(東京ドーム)で左背中に死球を受けて以来、痛みを抱えながら試合に出続けていたが、8月9日の中日戦(ナゴヤドーム)で途中交代。MRI検査の結果、骨折やヒビの手前である骨挫傷と判明し、プロ野球人生で初めて故障による離脱を余儀なくされていた。
「1打席目で再発したらどうしよう。よみがえってるんですよ、この前(中日戦で背中が)ブチっていった時の(感覚)が……」
ファームでの実戦調整を経ずに迎えた24日の復帰戦前には、そんな不安も口にしていた。