穴がなかったカープ。本来の力を発揮した攻撃陣、黒田を手本に「打者に立ち向かった」投手陣【小宮山悟の眼】
広島東洋カープが25年ぶりにセリーグを制した。優勝できた要因はどこにあったのだろうか。
2016/09/11
黒田の投球姿勢が投手陣に好影響
投手陣に関しては、昨年からチームに加入した黒田博樹の存在が大きかったように思う。今年の広島の投手陣からは、打者に立ち向かう姿勢が感じられた。
「打者に対して攻める」というのは、具体的に、黒田と同じようにインコースを多投するという意味ではない。配球の組み立ては、スコアラーのデータを、コーチや捕手が分析して決めているはず。外角球で勝負すべきというデータが出たら、そういうリードになるだろう。単純にインコースのきわどいところを突くシーンが多いから「攻める姿勢」を感じたわけではない。もっと精神的な部分の話だ。
投手、特にプロのマウンドに立つ投手には、「打てるものなら打ってみろ!」と思いながら投球するような気概が求められる。だが、これまで広島の投手たちには、「かわす」というイメージが強かった。しかし、打者から逃げよう、逃げようとしていると、いつかは捕まってしまう。だから、こちらから立ち向かうことが必要なのだ。
決して根性論を言っているつもりはない。高い技術を兼ね備えた選手が集まるプロの世界だからこそ、最後はそういう心の部分で差がついてくる。曲がりなりにも、現役時代に技巧派とか理論派と呼ばれたことのある私でさえ、自身の経験からそう思う。
たとえば、広島の偉大なOB故・津田恒実さんのような向こうっ気の強さは、プロの投手として、大きな武器になる。今年の広島の投手陣は、黒田を筆頭に、その津田さんが乗り移ったかのような投球を披露してくれた。
カープファンのみなさんは、ぜひ、25年ぶりの美酒を心から味わってほしい。
そしてCS、日本シリーズと、楽しみは続く。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。