サブローが手渡したバットに託された、香月一也へのメッセージ。大ベテランと接し、大きく変わった1年【マリーンズ浦和ファーム通信#28】
千葉ロッテマリーンズの香月一也は今季、打撃不振で悩んだ時期があった。そんな時、大ベテランのサブローに呼び止められた。
2016/09/10
千葉ロッテマリーンズ
「サブローさんのような選手になりたい」
サブローは9月1日に引退を表明した。香月一也はそれをニュースで知った。なんともいえぬ寂しさを感じた。それから数日後、ロッテ浦和球場の室内練習場にいたサブローに呼び止められた。「ちょっと、来い」。誘導された先に、愛用のマスコットバットがあった。いつも練習の際に使っていた実戦で使用するときより重めのバット。
「オマエに託すわ。大事に使ってくれよ」
涙がこぼれ落ちそうになった。試合直前だったから、堪えた。「ありがとうございます! 頂きます!」。頭を下げると一目散にグラウンドに駆け出した。
「泣きそうになるぐらいうれしかったです。ボクはまだ一軍の試合に出たこともないし、ヒットも打ったことがないけど、いつかサブローさんみたいな選手になりたい。引退試合をしてもらって、多くの人に愛される選手になりたいです」
目指すべき山の頂はあまりにも遠く尊い。それでも今、胸を張って、そう口にした香月一也がいる。大きな目標を公言することは決してないタイプのどちらかというと内気な選手。それが大ベテランと接した1年で大きく変わった。そして、その手には大事そうにバットが握られている。
先輩の優しさに包まれたバットを手に、妥協なき一軍への道を歩む。