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中日・谷繁監督の休養劇から見る、GM制の是非【小宮山悟の眼】

今季、中日ドラゴンズはシーズン途中で谷繁監督の休養を発表する事態となった。その一方で、落合博満GMにも責任を求める声がファンなどから上がっているという。

2016/09/28

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強いチーム・組織を作るために

 現在は、中日の他に、巨人、横浜、日本ハムの計4球団がGM職を置いているが、その中で本当の意味でGMとしての権限を持ち、しっかり機能しているのは、日本ハムの吉村浩GMくらいだろう。
 そのほかの球団に関しては、言葉は悪いが、外から見る限り、単にGMという肩書を持っているだけにしか映らない。
 
 GMとしての権限が及ぶ範囲がはっきりしないのだから、責任の大きさもはっきりしない。落合GMの責任論について、私が「何とも言い難い」と考える理由だ。
 
 GM職を置かない球団では、球団本部長とか、編成本部長、統括本部長、シニアディレクターなど、球団ごとにシステムや呼称は様々だが、そういう要職に就く何人かで、本来のGMがすべき仕事を分担している。
 日本ハム以外の3球団のGMは、そういう要職のうちの一つになってしまっているのではないだろうか。
 ちなみに、以前、あるチーム通訳に聞いたところ、外国人選手には、球団代表のことを「GM」と訳して紹介していたそうだ。
 
 メジャー流の球団経営を目指すなら、日本ハムのようなやり方をすべきだし、もっとそういう球団が出てきてもよいと思う。ただ私は、現在の日本プロ野球界の各球団に、必ずしもGMという役職が必要だとは思わない。
 メジャーの場合、毎年、FA市場が活況で、トレードも頻繁に行われる。チーム編成の選択肢が多いので、GMも個性を発揮しやすい。そして結果的に能力の差も表れやすい。
 しかし現在の日本のFA制度の仕組みでは、多くの選手がFA市場に上がらない。GMにとって一番の腕の見せ所であるシーンで、選択肢がほとんどないのだから、能力差も表れにくくなる。
 だったら、現在のように、本来のGMの仕事を分担するやり方でも十分だろう。
 ただその場合は、各役職の権限の及ぶ範囲を明確にすべきだ。そうすれば、責任の所在も定かとなる。
 これはプロ野球球団だけでなく、どんな組織においても言えることだが、そこが曖昧だと、各人がどうしても「責任を負いたくないから、余計なことはしない」という意識に陥りやすい。また、権限が重なってしまうと、衝突の原因にもなりかねない。結果として、満足のいく成果を得られなくなってしまうのだ。
 
 球団フロント業務における、各役職の権限と、それに伴う責任。そこを明確化しなければ、強い組織・チームは作れない。

小宮山悟(こみやま・さとる)
 
 1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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