日本ハム、首位に立ったのはわずか14日間。「配置転換」の妙が化学変化【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#39】
北海道日本ハムファイターズが11.5ゲーム差を追いつき、パ・リーグを制した。
2016/10/04
君臨することなく、チームの一員だったスーパースター
単純な戦力比較ではファイターズにまったく勝ち目がない。
それは年俸総額を比較しても明らかだ。実力があり経験があり、野性味まで兼ね備えたラインアップが先方には揃ってる。うちが誇れるのは若さくらいのものだ。若さには「爆(は)ぜる」勢いがある。ひとつのきっかけで爆発的に成長する。西川遥輝と高梨裕稔を思い浮かべていただきたい。
それからもうひとつ、「かけ算」が可能になるのだ。戦力の足し算ではなくかけ算。「化学変化」と表現してもいい。まだ個々の選手が未完成である分、柔軟性がある。使い方(使われ方)次第で、自分も変化し、まわりも変化する。
今季、用兵の妙は「配置転換」にあったと思う。投手主体で回してきた大谷翔平を、マメで登板を回避した後、打者で使い続けた。「打者大谷」はチームの主軸になった。僕はよくメディアが「いつまでマメを理由に投げさせないのか?(実際はマメじゃなく、どこか悪いんじゃないか?)」と騒ぎ出さなかったと思う。大谷は「相手投手の最も警戒する打者」として、また「積極的な走塁で点を線にする存在」としてチームを活気づける(実際、僕は「走者大谷」もカウントしての「三刀流」をイメージした)。
増井浩俊と吉川光夫の配置転換も面白かった。「クローザーとして結果の出なかった増井」を先発に回し、マーティンに固定した。これが成功したと思ったら、終盤、マーティンが故障し、「先発として結果の出なかった吉川」をクローザーに持ってきた。結局、吉川の抑え起用は不首尾に終わるが、絶えずこういう組み替えを試し、投手陣全体の「化学変化」をはかるのだ。
もちろん大谷翔平というスーパースターの大活躍あっての優勝だけど、大谷も「かけ算」や「化学変化」の一員であったと思う。スーパースターは君臨するのでなく、常にチームメイトに声援を送る存在だった。