“無双”スライダーが通用せず。成田翔が中日・小笠原、福浦とサブローから学んだ「ストレートの重要性」【マリーンズ浦和ファーム通信#29】
昨年甲子園で注目を集め、ドラフト3位で千葉ロッテマリーンズに入団した成田翔。しかしすべてにおいて力不足を痛感した1年目だった。
2016/09/16
千葉ロッテマリーンズ
大ベテランがバットで伝えたメッセージ
8月には夏バテも襲った。体重は一時、6キロほど落ちた。左ひじも炎症を起こし、ノースロー調整を余儀なくされた。その間に同じく高校を卒業してプロの門を叩いた選手たちが次々と結果を出していった。マリーンズに同期入団をしたドラフト1位ルーキーの平沢大河内野手も8月17日の楽天戦でプロ初ヒットを記録。その後も初長打、初打点と記録を重ねていった。ただ、野手ということでそれほど意識はしなかった。一番、気になっていたのはドラゴンズにドラフト1位で入った小笠原慎之介投手だった。
「同じ左投手ですし、高3夏の甲子園で、向こうは全国制覇。高校ジャパンでも同じチームでプレーをした。ずっと気にしていた」
9月4日のジャイアンツ戦(東京D)。小笠原が一軍でプロ初勝利を収めた。ニュースで知ると悔しさがこみ上げてきた。家族からは、初勝利後のなにかのインタビューで小笠原が「成田のほうが先に(一軍で)勝つと思っていた」とコメントをしていたと聞かされた。さらに悔しくなった。本人にはメールで「おめでとう」と短い祝福のコメントを送った。ただ、「そっちの調子はどうなの?」という戻ってきたメールに対して、あやふやな返事をしてしまった。まだファームでも未勝利。自分の事を問われるのが嫌だった。
「彼とボクの一番の差はストレート。彼はストレートが通用していた。それがあって変化球が生きる。それと気持ちですかね。彼には気持ちの強さを感じる。プロのレベルや環境にも動じない強さですよね」
ライバルのピッチングに、投球の基本であるストレートを磨くことの大事さを再認識した。ずっと感じていることでもあり、周囲からも言われていたことだった。左ひじの炎症が完治した8月下旬のロッテ浦和球場。フリー打撃で実戦復帰した際に二軍調整中のベテラン打者2人がわざわざ打席に立ってくれた。マリーンズのレジェンドである福浦和也内野手とサブロー外野手相手の実戦形式のピッチング。いとも簡単に打ち返され、スタンドインする打球に一流打者の凄みを感じ取った。なによりも、大先輩たちが自分のことを気にして、バットを振ってくれたことが身に染みた。2人から言われていた言葉があった。
「ストレートを磨けよ」――それを身を持って教えてもらった気がした。忘れられない出来事だ。