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FA渦中の岸が今季最終登板で見せた炭谷との絶妙コンビ。“最高の1球”は“最後の1球”となってしまうのか【中島大輔ONE~この1球をクローズアップ~】

9月27日の対北海道日本ハム戦。エースの岸が今季最終登板となった試合で見せたのはしびれる投球だった。試合を決めた1球をクローズアップする。

2016/10/03

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炭谷の細やかな配慮と配球。その思惑通りに投げた岸

 3球続けてストレートを投げ込み、ファウル、ボール、ファウル。いずれも威力のあるボールだったが、どの球も炭谷がミットの構えた場所から大きく外れていた。特に2球目は、外角要求が内角低めのボールになっている。

 1ボール、2ストライク。ストレートを3球続けて、次は普通なら変化球を想像する場面だ。岸にはカーブ、チェンジアップという決め球がある。

 だが、炭谷は内角にストレートを要求した。ここで見逃せないのは、サインを出した後、コースにミットを構えるのをいつもより遅らせている点だ。あえてアバウトなタイミングで、内角にミットを構えた。

 炭谷が内角高めのリードについて、こんな話をしていたことがある。

「インハイ(内角高め)は有効でもあるし、危険でもあります。インハイにこだわらず、(高さは関係なく)インコースと考えてピッチャーによって使い分けますね。インハイは引っ掛けることもあるし、難しいですから。(岡本)篤志さんはインハイでストライクをとれます。一方、岸さんは得意じゃないから、(高さは意識せずに)インコースと構える。十亀もそうですね」

 それが、まさに中島の4球目だった。炭谷はサインを出した後、真ん中に座ったままミットを寝かし、岸がセットポジションから投球モーションに入るや、インコースに構えた。
 
岸が思い切り腕を振ると、146kmストレートが内角高めに向かう。中島が思わず腰を引くほどの威力だった。
 
コースはわずかに外れていたかもしれない。それでも主審の手が上がったのは、岸が投げ込んだストレートの威力、そして炭谷が見せたキャッチング技術の賜物だろう。
 
この1球に込めた意図について、炭谷はこう説明する。

「見逃し三振になるまでとは思っていなかったですけど、たとえば変化球で行って間に落とされるとか、こちょこちょのヒットよりも、力勝負で行ってということですね。僕が勝手に、岸さんもそっちのほうがいいやろうなという判断でそうしました」

 1球にふたりの意思を結集させ、粘り強い中島にバットを振らせずに見逃し三振。最高の結果に仕留めた。これぞ、バッテリーの力である。
 
渾身のストレートでピンチを封じた岸は7回限りでマウンドを降り、リリーフ陣の完封リレーで今季9勝目を飾った。そして試合後、お立ち台に炭谷とともに上がり、冒頭の言葉をかけられたのである。

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