落合博満が語るウインターリーグ派遣の意図。若手のオフは「休養よりもさらに技術を高めておくことが必要」【横尾弘一の野球のミカタ】
落合博満監督時代から、シーズン終了後に中日の選手をドミニカのウインター・リーグに派遣するようになった。今年は、ルーキーながらフル回転した又吉克樹が参加。その意図はどこにあるのだろうか?
2014/12/27
ペナント終了後も実戦経験を積むことで、故障やケガに強い体を作る
森は西武コーチ時代、「マルちゃん」の愛称で親しまれたドミンゴ・マルティネス選手と親交を深めたことでドミニカ共和国の野球に関心を持ち、実際に現地まで足を運んで選手の特性やプレー環境などを把握する。
その人脈などを活用しようということになり、球団は06年にマルティネスと契約。森コーチとマルティネスのホットラインを拡大しながら、選手の派遣に漕ぎ着けた。4年間で派遣された選手は以下の通り。特に投手は一軍定着への登竜門となっているのがわかる。
2006年=髙橋聡文、長峰昌司、中里篤史、中田賢一
2007年=川井 進(現・雄大)、長峰、小林正人、吉見一起、久本祐一
2008年=藤井淳志、新井良太、前田章宏、川井、菊地正法、佐藤亮太、清水昭信、長峰
2009年=山井大介、浅尾拓也、長峰、山内壮馬、谷 哲也
派遣された選手たちは、大半が精神的に逞しくなって帰国するという。
日本とは異なった環境で野球漬けになり、その中で自分たちがいかに恵まれた環境で野球をやらせてもらっているかを実感するからだ。ゆえに、球団側が「行ってこい」と強制しなくても、選手が自主的に決断しているということ。07年の久本は、どうしてもと自費で参加したという。
現在では福岡ソフトバンクや巨人をはじめ、いくつもの球団が同様の選手派遣を行っており、派遣先もプエルトリコ、オーストラリア、台湾と増えている。
ただ、又吉のようにペナントレースでフル回転した選手の場合、それ以上に体を酷使することで故障やケガにつながったりはしないのだろうか。その懸念については、海外での指導経験もあり、侍ジャパンでテクニカル・ディレクターを務める鹿取義隆がこう説明してくれた。
「プロの第一線で活躍できる選手になれるかどうかは、どこまで若いうちに実戦経験を積めるかが大きなウエイトを占めています。マイナー・リーグの選手の多くが、オフになってもウインター・リーグに参加し、1年中プレーしていることからもわかるでしょう。若い頃の1年や2年、休まずにプレーして故障やケガをするような選手は、そもそもプロで生き残れない。反対に実戦経験を積むことで、故障やケガに強い体を作ることができるんです。トレーニングやケアも発達した現在なら、日本人がウインター・リーグに参加することに何の心配もいりません」
そして、派遣の大きな理由がもうひとつある。
チームがBクラスに沈む中でも活躍した又吉は、オフになればテレビをはじめ、あらゆるメディアから引っ張りダコになっただろう。自分の成績を認められて取材されるのは、選手にとっても気分の悪いことではない。
だが、そうやって忙しくしたことによる疲労が、意外に厄介なものだと落合GMは考えている。それならば、異国の地で野球をしていたほうが来年につながる。ドミニカ武者修行には、チームの宝である選手へのそうした配慮もあるのだ。
2月1日から紅白戦!? 6勤1休……落合式から考える『春季キャンプ』の意味【横尾弘一「野球のミカタ」】