今季引退・カープ黒田博樹がプロで生き残れた強さ――環境に適応、日米球界を代表する選手へ
広島東洋カープの黒田博樹が18日、今シーズン限りでの引退を表明した。22日からの日本シリーズを最後についにユニフォームを脱ぐ。
2016/10/18
MLBで新たな投球術を確立
ロサンゼルス・ドジャースとの間に3年3530万ドルの契約を結んだ黒田は、メジャーでも先発の一翼を担うことになる。
1年目はローテーションを維持し、規定投球回数に達した黒田だが、2年目には左わき腹の故障などで長期間戦線離脱。渡米直後の黒田は好不調の波が激しく、ベンチの信頼感は今ひとつだった。
そして黒田は、この時期に投球スタイルを変革する。
NPB時代はフォーシームを主体にスライダー、カーブ、カットボール、フォークなど多彩な球で打者を料理していたが、MLB移籍後はツーシーム(シンカー)を主体とし、切れの良いスライダーとスプリットでゴロを打たせる技巧派に変身した。
中4日という過酷な登板間隔にも、黒田は適応した。
MLB通算で中4日での登板成績は43勝37敗、防御率3.64。中5日では27勝31敗、防御率3.27。防御率はやや悪化するが、勝率は中4日のほうが高い。試合をしっかり作っていることがわかる。
ヤンキースに移籍後も黒田は安定感のある投球を続けた。ヤンキースは大型契約をしたC.C.サバシアが不安定で、ベテラン投手が引退するなど、先発陣が定まらなかったが、黒田はチームで唯一、安定感のある投球を続けた。
シンカーでカウントを整え、スライダー、スプリットで料理するという黒田のスタイルは、ヤンキースにやってきた田中将大、そしてマリナーズの岩隈久志にも大きな影響を与える。三振を奪う松坂大輔、ダルビッシュ有とは違う、技巧派日本人MLB投手の系譜は、黒田から始まったといえるだろう。
2014年も黒田はチームで唯一規定投球回数に達し、安定感のある成績を残した。しかし、この年のオフにFAとなった黒田は、MLBではなく広島への復帰を選択する。