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辻内崇伸、ドラフト1位の肖像――1試合19奪三振を記録した05年夏「ホンマにあれ、奇跡なんですよ」|第2回

かつて「ドラフト1位」でプロに入団した選手1人の野球人生をクローズアップする。華やかな世界として脚光を浴びる一方で、現役生活では「ドラフト1位」という肩書に苦悩し、厳しさも味わった。その選手にとって、果たしてプロ野球という世界はどのようなものだったのだろうか。(2016年10月23日配信分、再掲載)

2020/04/07

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辻内の評価を確固たるものとした準決勝

 大阪桐蔭は清峰、そして東北高校を破って準決勝に進出した。相手は前年度優勝校の駒大苫小牧――。
 
 2回、辻内は四球でランナーを出すと、バント処理にもたつき安打にしてしまった。ここから4安打を浴びて5点を失ってしまう。
 
 大阪桐蔭は、駒大苫小牧の2年生投手、田中将大に5回まで安打0に抑えられていた。後に東北楽天ゴールデンイーグルス、そしてニューヨーク・ヤンキースの18番となる田中からは、したたかな投手であるという印象を受けたという。
 
「球は速かったですよ。スライダーがキレっキレで、平田とか三振ばかりでした。中田に対してもそうでしたねただ、ぼくに対してはそうでもなかった。人によって投げる球を調節しているのかなと」
 
 前の試合で1試合3本の本塁打を打った平田は、田中に対して3打数0安打、2つの三振を喫している。
 
 7回、辻内は田中からランナー2人置いて本塁打を打っている。
 

 
「(球に向かって)行け、行けって。5対0で負けていたんで、頼むから最後の思い出にさせてくれと。そうしたらホンマに入ってしまってびっくりしましたね」
 
 さらに大阪桐蔭は8回に2点を返し、試合は延長戦に入った。しかし、10回表に辻内は1点を失い、5対6で大阪桐蔭は敗れた。この試合で、辻内は10回を投げきり16三振を奪っている。
 
 速球派の左腕、辻内の評価はこの甲子園で確固たるものとなった。
 
 翌9月に韓国で行われる18歳以下の選手によるAAAアジア選手権日本代表――。辻内は韓国との決勝戦に登板している。8回に155キロを記録し、スタジアムからどよめきが起こった。試合は延長戦となり、日本がサヨナラ勝利を収め、金メダルを獲得。
 
 辻内はこの年のドラフト会議で最も注目される選手の一人となった――。

 
 

【プロフィール】
辻内崇伸(つじうち・たかのぶ)
 
大阪桐蔭高校3年時、夏の甲子園1回戦の春日部共栄戦で152km/hをマーク。一気に注目を浴びる。2回戦の藤代戦では当時の大会タイ記録となる19奪三振を記録。同校をベスト4へ導く原動力に。05年の高校生ドラフト会議では読売ジャイアンツとオリックス・バファローズとの競合の末巨人が指名権を獲得し、1巡目指名で入団。しかし、プロ入団後は度重なる故障に悩まされ、結局06年から引退する13年まで一軍公式戦出場はなかった。引退後、2014年より日本女子プロ野球機構(JWBL)の埼玉アストライアのコーチ、2016年からはレイアのコーチを務める。
 
 
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ドライチ ドラフト1位の肖像

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