甲子園優勝投手・今井を単独1位指名した西武。現実より夢、ドラフトに見るチームの野心と課題
プロ野球新人選手選択会議(ドラフト)で西武が1位指名で交渉権を獲得したのは作新学院のエース・今井達也だった。3年連続のBクラスと、低迷期に突入したチームは辻発彦新監督のもと再出発を図っているが、ドラフトはどのような意図が見えたのだろうか。
2016/10/27
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高卒投手が武隈、菊池しか活躍していない現状で今井をどう育成するのか
ファンにとって、ドラフトは夢を見る機会だ。自分が応援するチームは、数多くいるスター候補から誰を、どんな意図で選択するのか。翌年以降に向けてチームがどんな構想を描き、どれほど大きな野心を持っているのか、指名から見て取ることができる。
35年ぶりとなる3シーズン連続のBクラスに低迷している西武にとって、今回のテーマは先発投手、即戦力選手だった。
今季4位に終わった理由の最たるものは、先発投手陣の不振にある。まず、ローテーションを回す駒が足りていない。岸孝之のケガ、十亀剣や野上亮磨、髙橋光成の計算違いなどがあり、及第点をつけられるのは12勝7敗の菊池雄星くらいだった。さらにいえば来年、彼らが期待通りに活躍する保証はない。
また、フリーエージェント(FA)権を取得した岸はドラフト時点で去就を明言しておらず、菊池は順調に行けば2020年オフに海外FA権を獲得する。そうした状況のチームはエース候補=夢、即戦力=現実の両方とも求められるなか、果たしてどちらを選択するのだろうか。
結論から言えば、西武は今回のドラフトで現実より大きな夢を見た。その象徴が、今年夏に作新学院を54年ぶりの優勝に導いた今井達也の1位指名だ。
「自分自身、まだまだ成長段階だと思います。これから2、3年経つごとに、自分がどれだけ成長できるかをすごく楽しみにしています。球界を代表するようなピッチャーに、ゆくゆくはなりたいとは思っています」
高校生だから当然だが、今井はまだまだ発展途上にある。最速152kmを誇るとはいえ、180cm、72kgの痩身投手はプロで長いシーズンを戦い抜く体がまだできていない。
もちろん、西武はそれを承知しているはずだ。高校2年時夏に甲子園メンバーから外れた悔しさをバネに、強い意志で優勝投手まで成り上がった今井は伸びしろを大きく残している。そうした好素材をどれほどの投手に育てることができるか、球団として夢をかなえる力、つまり育成ビジョンが問われることになる。
ただし不安なのが、高卒投手で現在1軍の戦力になっているのは菊池雄星、武隈祥太のふたりしかいない点だ。2年目の髙橋光成、4年目の誠、佐藤勇と先発候補を抱えるチームは、今井の獲得を機に、これまでの育成戦略が本当に正しかったかどうか、見直してほしい。