各球団の平均年齢とNPBの年代別構成から見える、過酷なプロ野球の競争環境と球団状況【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。2015年最初のテーマは、「ひつじ年」世代だ。
2015/01/04
「ひつじ年」世代から、プロに生き残る厳しさを〝数値化〟してみた
NPBの競争環境をさらに詳細に知るために、同じ世代でプロ入りした選手が活躍する確率はどれくらいなのか、調べてみることにした。
1979年生まれで、高卒でプロ入りした同学年の選手の試合出場記録。なお、1979年4月1日から1980年3月31生まれまでの選手とした。「ひつじ年」だけでなく「さる年」の早生まれの選手も含まれている。また阿部慎之助など79年早生まれの選手は含まれない。大卒、社会人卒のプロ入り選手も含まれていない。
年度別の出場試合数の推移で、グレーはNPBの球団に在籍していることを表す。
79年生まれは「松坂世代」の1学年上、高卒でドラフト指名されたのは34人。このうち現役はわずか3人だ。
この年、大学と社会人は「逆指名」制度があったが高校は通常の指名のみだった。
複数球団が指名したのは、平安高校の投手・川口知哉と、仙台育英高の捕手・新沼慎二の二人。しかし川口の1軍試合登板はわずか9試合に終わった。新沼の1軍試合出場は143試合。現役時代、期待に十分に応えた成績とは言いがたいだろう。
1年目に1軍の試合に出た選手はゼロ。2年目になってようやく6人の選手が出ている。
現在も現役なのは、日本ハムの控え内野手の飯山裕志、ソフトバンクのセットアッパーの五十嵐亮太、オリックスの先発の井川慶の3人だ。高卒の選手の素質を見極めるのは難しいと言われるが、前評判通り活躍する選手は本当に少ないのだ。
この時期から、トップクラスの選手はMLBに挑戦するようになる。この世代からも井川、五十嵐の2人がアメリカに渡った。井川慶は2007年にヤンキースに5年2000万ドルで入団。同年にレッドソックスに入団した松坂大輔とともに大いに期待された。しかし井川は活躍できず、3年目から3年間はマイナーチームで「塩漬け」になる。
五十嵐亮太はメッツと2年300万ドルで契約。しかし彼も怪我に泣かされ活躍できなかった。
2人はNPBに復帰。井川は故障もあって活躍していないが、五十嵐は救援の切り札になっている。
17年目のシーズンを終えたが、1000試合出場も100勝投手もなし。
34人のNPB球団の平均試合出場数は114.3試合。在籍年数は8.7年。この年はやや「不作」といえるだろうが、プロ野球で活躍するのは本当に厳しいことがわかる。
こうしたデータを見ると、NPBの1軍で一線級で活躍している選手は、本当にすごいことだと改めて思う。