大谷という切り札を巧みに使った日本ハム。予想していた想定を超え、チグハグさが露見した広島【小宮山悟の眼】
10年ぶりに日本一に輝いた日本ハム。両チームの勝敗の差はどこにあったのだろうか。
2016/11/07
広島の想定を超えた出来事
その試合の広島1点リードで迎えた8回裏、2死2塁で大谷が打席に入った場面。広島ベンチは、大谷を敬遠して次打者の中田翔と勝負する選択をした。この采配について、物議を醸しているようだが、結論から言えば、私は敬遠を指示した采配自体には大きな間違いはなかったと思っている。
確かに、逆転のランナーとなる大谷を塁に出してまで逃げ切りを図るのなら、守備固めをしておくべきだったろう。広島ベンチは、そのための要因である赤松真人という駒を有していた。
しかし、もしかしたら、緒方孝市監督の頭の中には、9回表の攻撃で、松山竜平に打順が回ってくるという計算があったのかもしれない。だから、あえて松山を守備に着かせたままにしたと考えれば筋が通る。
問題は、そういうベンチの意思を松山が理解していたかどうかだ。松山としては、「自分が守備に着いている」=「同点でもよい場面」と考えなければいけない場面だった。通常ならば、守備固めをする場面で、なぜそうしなかったか。それは、ベンチが同点での延長戦も想定していて、そこで松山のバットに期待していたから。だからこそ、打球に突っ込んで後逸してしまう、逆転につながるプレーだけは避けなければいけなかった。
断っておくが、あの打球を捕球できなかった松山の守備力を責めているわけではない。その時の状況判断がまずかったのだと言いたいのだ。そして、広島ベンチが彼の守備力をどう評価していたかについても、疑問に感じる点がある。
私は毎日、広島の試合だけを追いかけているわけではないので、松山の外野手としての守備力を正確には把握していない。ただ、あえて凡ミスと言わせてもらうが、ああいうプレーをしてしまうレベルならば、ベンチは指示を徹底するべきだったし、松山の守備力自体を把握していなければ、それこそ大きな問題だ。
いずれにしても、広島ベンチのチグハグさが垣間見えた場面だった。
広島ベンチも当然、様々な場面を想定してシリーズに臨んだはずだ。ただ、その想定をわずかに超えてしまうような事態が起こってしまう。それが、今言ったチグハグさにつながる。そして、そのチグハグさは、第3戦目以降もいくつか表れ、最も顕著だったのが、第6戦8回の、あのジェイ・ジャクソンの大炎上だ。
ジャクソンの起用に間違いはないだろう。シーズン中もそうやって広島は勝ってきたのだ。でも、実際には、ピッチャーのアンソニー・バースに打たれるという想定外の出来事が起きてしまった。
広島は最後まで、そういうチグハグさを修正できなかった。そのきっかけとなったのが、第3戦8回の大谷敬遠→中田勝負の場面だったわけである。