桜美林大学・ドラ1佐々木千隼「やらされてやる野球ではない」――明治神宮大会初出場初優勝目指す津野監督の野球論
関東地区大学野球選手権大会決勝で上武大学を延長12回6対5で激戦を制し、初の明治神宮野球大会出場を決めた桜美林大学。今年のドラフトで注目を集めた大学屈指の好投手・佐々木千隼を中心に、全員野球で初戦14日に臨む。
2016/11/14
高木遊
社会人時代の経験を生かす津野監督の指導
津野監督が、桜美林大学の監督に就任して今年で4年目。球場で委縮せず、のびのびとプレーする選手たちの背景に何があるのか訊くと、監督は自身の社会人時代の経験を口にした。
津野監督は社会人時代の91年から01年の11年間、今は廃部となったシダックスに籍をおいていた。中でも95年から97年にかけての3年間、監督以下スタッフがキューバ人になったことに大きな影響を受け、その野球に触れたことで、現在の野球観、指導の原型が出来たのだと話す。
「(キューバは)上下関係が本当にないですし、ラテン系のノリといいますか、練習が終わったら自然と『みんなありがとう』『また明日も頑張ろうぜ』ということだったり、試合でミスをしても『次行こうぜ、次』というノリが定着しているんです。私が社会人時代にそのキューバ野球に触れてきたことが、今の桜美林大学野球部の雰囲気に繋がっているのかなって思います。当然、日本の上下関係だったり、規律を守ることだったりも忘れないようにはしているんですけども、試合時や練習の雰囲気作りに関しては、かなりキューバ野球の体験が染み込んでいますし、それを今、ここでやっているのかもしれません」
桜美林大学が練習する小山田グラウンドに行くと、すれ違う選手及び学生スタッフが気持ち良いほどの笑顔で挨拶をしてくる。今回の取材を申し込む際に応対した学生スタッフもいい意味で物怖じすることなく、適度なフランクさを保ちながら筆者に接してくる。当然、そこに大人にやらされている感はないし、これも監督のいう雰囲気作り。ここにも桜美林の強さの秘訣を感じた。
「まず、私のやりたい野球として全員野球というものを掲げているのですが、うちの場合は希望してきた選手のほとんどがうちで野球をやりたいと言ってもらえています。練習も全員でやりますし、リーグ戦が近付くとメインはメンバーにはなるんですけど、それ以外はメンバーに入っている学生でも3~4時間、Bメンバーに入っている学生も2~3時間の練習をさせるのをモットーにしています。上下関係についても上級生だからとか下級生だからとかそういう野球ではなく、垣根をなくして、誰が偉いとかそうした雰囲気作りも極力なくして、そういう面で下級生もノビノビと、上級生も下級生の面倒をしっかり見ながら、その逆で下級生は上級生を敬いながらやれるようにはしているので、そうした雰囲気作りが、試合でもノビノビとした野球をやっているように見えるのではないでしょうか」