元ロッテ・香月良仁のプロ野球人生#2 隠していた左足の靭帯断裂、トライアウトを受けなかった理由
今季、千葉ロッテマリーンズを退団した香月良仁。自身の野球人生は、いつ途切れてもおかしくなかった。しかし運命的な野球人との出会い、さらに野球を諦めさせなかった今は亡き父の存在によって、香月はプロ野球という限られた人しかプレーできない世界に足を踏み入れることができた。
2016/11/23
昨年のファン感謝イベントでの負傷
「ゴリゴリ」
その瞬間、彼の足首が悲鳴をあげた。
今からちょうど1年前となる昨年の11月22日のことだ。
QVCマリンフィールドで開かれた千葉ロッテのファン感謝イベント「スーパーマリンフェスタ2015」で、香月良仁は思わぬアクシデントに見舞われた。
ファンと選手がグラウンドでキャッチボールをする交流の中で、ファンの投げたボールがすっぽ抜けて右側に大きく逸れると、これを追い掛けた香月は近くにあった三角コーンに足を取られて転倒。そこで左足首を痛めたのだ。
「隣の人の邪魔になるからボールを取らなきゃとつい思ってしまったんですよね。そこで『あっ、ボールが行っちゃった』と見送っていれば、また別の結果になったと思うんです。あの出来事が結果的に今年1年に、大きく影響したのかなと思います」
次の日からチームはオフシーズンに入った。しかし、チーム関係者にそれを伝えたらせっかく手にしたチャンスがまたこぼれ落ちてしまう。
「プロの世界は(怪我に対して)用心に用心を越すところなんで、自分が『行ける』と感じてもなかなかGOサインを出してもらえない。自分の中では2015年に1年間とおして1軍で(40試合)投げられたというのがあったし、今年(2016年)が本当の勝負だと思っていた。そこで怪我をしたとかの報告をしたくなかったんです」
自宅に戻ってしばらく休んでいれば怪我は治ると考えた。
しかし、腫れは全く引く気配がない。そこで自分の意志で初めて病院にも足を運んだ。
結果は左足の靭帯断裂だった。
頭の中は真っ白になった。
手術はなんとか逃れたが、完治するまでの12、1月は全く走り込みもできない状態。シーズン開幕に向けて影響がないはずはなかった。
2月にキャンプインを迎え、痛みはだいぶ治まった。