「田邊監督と過ごした時間だけでも、プロに行った価値はあった」星秀和、引退を決断した理由【中島大輔 One~この1人をクローズアップ】
『ベースボールチャンネル』ではこれまで独立リーグから、再びプロ野球入りを目指す元埼玉西武ライオンズの星秀和を追いかけてきた。その星が引退を決断をした。直接、本人に引退を決断した理由と、今後について直撃した。最後にファンの皆様へメッセージを預かったので、ここで披露したい。
2015/01/06
Daisuke Nakajima
今後は、G.G.佐藤とともに営業マンに
長くも短くもあるプロ野球生活で、最も印象に残っているのは泥にまみれた時間だ。現在、監督として西武を率いる田邊徳雄が2軍の打撃コーチだった頃、星はずっとマンツーマンで鍛えられた。その時間について、星は「えぐかった」と振り返る。
「朝起きてすぐ、連続でマシン打ちをやるんです。マシンから来るボールは、力を入れないといい打球が行かない。それを朝に連続でやりまくって、グチャグチャな状態で試合をやる」
2軍の試合が終わっても、星の1日は終わらない。西武第二球場の隣にある室内練習場で、再びマンツーマンでバットを振り込んだ。
「試合後には無限ティーバッティングが待っているんですよ。200球くらい入る箱が3つ山積みになっていて、全部終わるまで30分くらいノンストップで打つ(苦笑)。あの室内の匂いをすごく覚えています。マジで手が痛くて、車のハンドルを持てなかった。夏とかヤバかったですね。それがプロで一番印象に残っています」
第二の人生は、2月から始める予定だ。西武に入団して初めてのキャンプで同部屋だったG.G.佐藤に誘われ、彼の父親が代表取締役を務める株式会社トラバースに就職する。地盤調査などを行う会社でまずは現場の知識を蓄え、行く行くは営業マンになりたいと考えている。
「働いたら働いたほど給料が増える会社なので、稼ぎたい。プロ野球選手の頃に稼ぎを戻すのが、第一の目標です。悲壮感じゃないですよ。モチベーションとしてね。『もっと、もっと』ってやっていけば、仕事の質も絶対違ってくると思うんですよ。だから貪欲にいきたい」
少なくとも向こう3年間は、泥のように働くつもりだ。そうやって星が覚悟を固められた背景には、田邊監督と過ごした時間がある。
「あのティーをやって、『ほかにできないことはないんじゃないか』と思わせてくれた。それだけで、プロに行った価値があったと思います」
2015年1月4日に品川で会った星は、不思議な爽快感を漂わせていた。3カ月前に前橋市民球場で話した頃と、まるで変わらない姿だった。
星秀和よりファンにメッセージ
「ライオンズのときのファンの人が、群馬にもけっこう応援に来てくれたんです。超ありがたかったですね。ペガサスは僕の地元のチームだったこともあり、たくさん応援してもらいました。そういう人たちにも感謝しています。アンダーアーマーにはプロ野球の後、独立リーグでも1年間面倒を見てもらいました。用具関係の人にも感謝です。なんか、感謝ばかりだな。でも、それしかないでしょ?
プロをクビになって、いろんな人に連絡したんです。いままで応援してくれた人、それと応援してくれたかもしれない人に。その中で声をかけてくれて、プロ野球選手という、ふんどしがないのに付き合ってくれた人たちには、すごい感謝です。だって、本当の付き合いをしてくれたってことじゃないですか。飲みに誘ってくれたり、お仕事の話をしてくれたり、すごくありがたかったです。
これからも、そういう人たちと付き合っていきたいですね。感謝の気持ちを持って、これからは野球人生より長い第二の人生があるので、頑張っていきたいと思います」