セリーグ新人王の阪神・髙山俊、1年目からなぜプロに適応できたのか。大学時代から見せていた打棒の秘訣
28日、セリーグ・新人王に阪神の髙山俊が選ばれた。明大時代にリーグ安打記録を樹立するなど注目打者ではあったが、髙山がなぜ、プロに入ってもこれだけの成績を収めることができたのだろうか。
2016/11/28
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134試合出場、2軍降格は一度もなし
金本知憲監督の掲げたスローガン、「超変革」の象徴的存在としてドラフト1位で阪神タイガースに入団した髙山俊。開幕から外野の一角に定着すると、一度も登録抹消されることなく球団新人記録を更新する136安打を放つ見事な結果を残し、阪神の野手としては赤星憲広以来15年ぶりとなる新人王に輝いた。
高い期待を受けて入団しても1軍に定着することができない選手が多い中、髙山はなぜこれほど成績を残すことができたのだろうか。アマチュア時代からのプレー、取材からその理由に迫る。
改めて髙山の今季の主な成績を振り返りたいと思う。
出場試合:134試合(リーグ12位・チーム3位)
打率:.275(リーグ16位・チーム2位)
安打:136本(リーグ14位タイ・チーム2位)
二塁打:23本(リーグ14位タイ・チーム3位)
三塁打:5本(リーグ4位タイ・チーム1位)
本塁打:8本(リーグ27位タイ:チーム4位)
打点:65打点(リーグ14位・チーム2位)
得点圏打率:.377(リーグ2位・チーム1位)
リーグの上位に名を連ねたのは三塁打と得点圏打率だけだが、チーム内ではほとんど全ての成績でトップ3に入っている。12球団最下位のチーム打率に終わった阪神にとってなくてはならない存在になっていたことがよく分かるだろう。
そんな中でもまず特筆すべきは1年間通じて一度も2軍に降格することなく、試合に出場してコンスタントに結果を残したというところだ。134試合出場は球団の新人記録でもある。
大学時代は4年秋に試合中のアクシデントから右手首を骨折して最後の4試合は欠場したものの、その期間を除いて故障らしい故障がなく4年間試合に出続けていた。東京六大学で48年ぶりにリーグ記録を更新する131安打をマークすることができたのも、故障の少ない強い体があったからこそである。この強い体が髙山の魅力であり、プロの長いシーズンを戦ううえでも非常に重要な要素だったことは間違いない。
次に注目したいのはやはりバッティングの技術面だ。髙山のバッティングの良さは一言で言うと、ヒットのバリエーションが多いところである。
今シーズン放った136安打の内訳を見てみると、レフト方向に33本、センター方向に39本、ライト方向に41本と三方向に打ち分けていることがよく分かる。また、内野安打も23本を記録しており、これはリーグ4位の成績である。
大学時代に放った安打の内訳を見ても新記録となった128安打の時点でレフト方向が28本、センター方向が30本、ライト方向が46本、内野安打が24本という成績が残っており(日刊スポーツ2015年10月11日付)、一方向に偏ることなく広角に打ち分けていることがよく分かる。
大学時代から決してきれいなヒットだけではなく、バットを折りながらも外野の前に落とすように打球やボテボテのゴロを足で稼いでヒットにすることも少なくなかった。この広角打法と内野安打の多さを可能にしているのが対応力の高いスイングと走塁への意識の高さだ。
大学時代に本人に話を聞いた際にも「力だけでなく技術が必要だということは本当に思いますね。それぞれのコース、高さに合わせてしっかりバットが強く出せるということ。同じようにスイングしていてはボールをしっかり捉えることはできないです」と技術の重要性について語っていた。
緩急への対応についても「動きで一番意識しているのは“静から動”ではなく“動から動”ということです。下半身を使って動きながらタイミングをとることで緩急にもついていけると思います」と、右足とバットを小さく動かすフォームについて理詰めで説明しており、天性だけで打っているわけではないことがよく分かる。
自分の言葉で技術を説明し実践できるからこそ、プロの高いレベルにも対応できだのだろう。そして走塁も大学時代から本当に意識が高い。中学3年時には200m走で県大会4位の成績を収めたほどの脚力を持っているが、ただ速いだけでなく常に全力疾走を怠らない姿勢がこれだけの内野安打に繋がっているのだ。