投球効率の良い投手は、パは有原航平、セは山中浩史。懸念すべき則本昂大、藤浪晋太郎【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はNPB選手の投球効率についてだ。
2016/11/25
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効率的な投球をする選手がいるチームは強い
投手成績の重要なファクトに「投球数」がある。投球数が多い投手は、消耗が早いので、長いイニングを投げることができない。また、肩、肘への負担が大きくなるので、故障のリスクが高まる。
一般論でいえば、良い先発投手は少ない投球数で長い回を投げる投手だと言えよう。
今季、100イニング以上投げた投手の投球数と効率を見ていこう。
P/IPは1イニングあたりの投球数。BB9は、9イニングあたりの与四球数、SO9は9イニングあたりの奪三振数。P/FBは打者1人あたりの投球数。
パリーグ、100イニング以上投げた投手のP/IPランキング。リーグ平均のP/IPは16.89だ。
最も投球効率が良かったのは、日本ハムの2年目、有原航平、1イニングを15.20球で投げている。
僅差の2位はロッテの3年目、石川歩。石川はBB9が最小、最も制球力の良い投手だった。P/IPは制球力が良い投手が上位に来る。防御率1位は、この優れた制球力の賜物だ。
10位以内には、日本ハム、ソフトバンク、ロッテと今季ポストシーズンに進出したチームの投手が並んでいる。
効率の良い投球をする先発投手がいるチームが優位なことがよくわかる。
奪三振が多い投手はP/IPの数字が悪くなる傾向がある。打たせて取るほうが三振を奪うより、球数が嵩むからだ。
パの奪三振王則本昂大のP/IPは、リーグ平均よりかなり悪い。それでもリーグ最多の195回を投げ、11勝をマークしたのだから、エースと言えるが、投球数はリーグ1の3384球。
一般的にNPBの投手コーチは先発投手に「1イニング15球、200回投げて3000球」という目安を設ける。
3000球を大きく超える球数を投げた投手は、疲労がたまり、故障のリスクも高まる。
金子千尋は、2014年、2015年と3000球以上投げてから、故障がちとなり、成績は低迷した。則本は2014年3221球、2015年3196球、3年連続でリーグ1位の投球数を投げている。鉄腕投手だが、効率的な投球を考えるべきだろう。
大谷翔平は奪三振率を現すSO9では則本昂大を上回っているが、P/IPはかなり優秀。大谷にはファウルさえ打たせないような剛速球や切れの良い変化球がある。奪三振率を上げても、無駄球が少ないのだ。こういう点でも、大谷翔平は優秀だ。