打率は.250、20本塁打の選手は翌年何を伸ばすべき? 落合博満氏が重視する”自己分析力”【横尾弘一の野球のミカタ】
プロを目指す選手にとって、そしてプロへ進んだ選手が長年プレーする上で大切なことは何か。
2016/11/30
野球という競技に求められる要素
「何かがおかしい」
そう感じて以前のフォームや感覚に戻そうとするが、それで泥沼にはまってしまい、20本塁打75打点が自己最高のまま、ユニフォームを脱ぐ選手もいたという。
「少年野球に始まり、プロの世界まで、日本の指導者はどうしても長所を伸ばすより、欠点を直す方向になってしまう。少しでもバランスのいい選手になってほしいという親心だろうし、チームとして勝たなければならないという状況もあるでしょう。だからこそ、なるべく選手本人が自分の長所はどこで、どんな選手なのかを知るべき。それがプロで成長する道であり、プロの扉を開ける道でもあるんだから」
今年の社会人野球の大会を視察している時、ある中心打者が1点追う試合中盤の無死二塁で打席に立った場面。この打者は、緩い変化球を左中間へ長打にするパンチ力と、威力のあるストレートを右方向に低い弾道で打ち返す技術を持っていた。結果は、緩い変化球を引っ張っていい当たりのレフトライナーだった。落合はこう言った。
「今のカーブは低めに来ていて、打っても打球は上がらない。相手バッテリーだって、彼のデータは頭に入っているはずだから、余程の投げ損ないじゃない限り、彼の待っているコースのカーブは来ない。ならば、やや差し込まれても右方向に打てるストレートを狙い、最低でも一、二塁間へのゴロで走者を進めるべきでしょう。それでワンアウト三塁にすれば、まず同点のチャンスは広がるんだから。要するに、チームを勝たせるバッティングができていない。だから、私は必要としません。そういう意味でも、自分がどんな選手なのかを知るべきでしょう」
強肩、俊足、150キロを超える剛速球。それらはプロのスカウトが注目する大きな魅力だが、そうした能力を備えていても、チームの勝利につながるプレーができなければ意味はない。野球とは、誰よりも速く走る競技でも、遠くへ投げる競技でもない。一つひとつの場面ごとに、チームを勝たせるには何をすべきか考えてプレーする競技なのだ。
プロを目指す選手が、肝に銘じておいてもいい要素だろう。
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