生き残りを懸けたトライアウトは『イベント』にあらず。華やかさ不要、今一度開催意義の見直しを
11月12日にプロ野球12球団トライアウトが開催された。今年は甲子園球場で開催されたが、残念なシーンが目立った。
2016/12/05
プレーに熱を感じることができなかった
それにしても、トライアウト当日に甲子園に訪れた約12000人の観衆の多さには違和感を覚えた。甲子園名物の焼き鳥を頬張り、あるいはビールを片手に、通常の野球観戦さながらに声援を送っている。
特に、甲子園に本拠を置く阪神タイガースに籍を置いた選手たちへの声援は尋常ではなく、「頑張れ」「頑張れ」と背中を押す声が飛び交い、生き残りを懸けた戦場の場にしては、華やかでありすぎた印象だった。
バックネット裏には日本球団の編成部スカウトをはじめ、海の向こうメジャ―リーグや台湾球界のスカウトまで訪れていたが、まるで、楽しいイベントごとのような空気感だった。
繰り広げられるプレーも淡白だった。
投手のストレートが145キロを超えたのが、ソフトバンクの巽真悟とあと数人だったし、インコースを強気についていったのはオリックス・バファローズの佐藤峻一と千葉ロッテマリーンズの伊藤義弘ぐらいだった。打者も長打がオリックスの堤裕貴の1本のみ。これが今年の参加選手たちの力量という見方もできるが、プレーに熱を感じることがなかったのは否めない。
もっとも愕然としたのは、出場選手の多くが凡打のあと全力疾走を怠っていた点だ。
広島東洋カープの中東直己、堤はまだ真面目に走ったほうだったが、他の選手は凡打であることがわかると手を抜いてしまった。メンタル的に「ファイトしない」というだけではなく、全力疾走しなければその選手の力量は見えてこない。ひた向きな姿勢を見せることはかっこ悪いことではないのだ。
全力疾走だけではない。
シートノックから捕手のスローイングを気にかけてみていたが、ストライク返球がほとんどなかった。ストップウォッチでタイムを測っても、2秒を切るかどうかの境目くらいで、送球がきっちりいかない。捕手なら、守備力をアピールすべきはずだが、彼らからはその姿勢を感じることはなかった。野手との兼任で捕手も務めた中東、ロッテの青松慶侑はアピールを怠らなかったが、全体的には非常に残念なシーンだった。