「先発中5日制」へダルビッシュの提言がきっかけになったベンチ入り人数枠増加案。新労使協定で合意ならずも大きな意義【小宮山悟の眼】
11月30日、メジャーリーグ機構と選手会との間で、新たな労使協定の内容に関して合意に達した。個人的に注目していたのはロースター枠の拡大だった。
2016/12/10
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日本人が問題提起したという意味では画期的
ベンチ入り人数が1人増えれば、先発投手を1人加えることができ、ローテーションを中5日で回せるようになる。そうなれば、投手の肩やひじの故障は格段に減るだろう。
また、先発投手を増やすことになれば、必然的にユーティリティープレーヤーの必要性も高まってくる。各チームとも内外野を守れる選手を1、2人ベンチに入れるような編成が主流になる。26人枠の導入は、現場の野球にも大きな影響を与える可能性があったわけだ。
2014年のオールスターゲーム前日記者会見で、ダルビッシュが「中4日では短い。だからメジャーでは日本に比べて手術をする投手が多いのだ」という旨の発言をした。この提言が、26人枠案の発端になっている。
残念ながら今回の新労使協定で26人枠は採用されなかったが、日本人選手の提言がMLBのルール作りにおいて、ここまで真剣に話し合われたのは初めてのケースではないだろうか。
交渉の過程の詳細を知らないので、断言はできないが、26人枠が合意に至らなかった理由には、金銭的な問題の他に、もしかしたら、「リーグ全体の投手力が向上すれば、ファンの期待する打撃戦が少なくなる」という意見があったかもしれない。
個人的には、日本プロ野球のように、28人登録25人ベンチ入りの構成が理想だと思う。そうすれば、投手も怪我は半減すると断言できる。ただ、1人分増やすだけでも合意に至らなかったのだから、3人分増やすのは相当難しいことであるのは確かだが……。
繰り返しになるが、残念ながら今回の新労使協定の締結において、アクティブ・ロースター枠の拡大は合意に至らなかった。だが、その議題が交渉の俎上に載ったこと自体に大きな意義があると思う。
今回の協定が施行され、次の協定が結ばれるまでの5年間、「先発投手の中4日登板」の是非について、機構側、選手会側とも、より注意深く見守ることになるだろう。「先発ローテーションの中5日制」実現の道が、完全に閉ざされたわけではない。投手の健康のためにも、次回こそ採用されることを願う。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。