鈴木誠也、流行語大賞「神ってる」を生んだ2試合連続サヨナラ弾。過去にもあった“神ってる”劇場
今年の「2016ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、セリーグを制した広島の緒方孝市監督が鈴木の活躍を表現した「神ってる」が選ばれた。
2016/12/03
89、00、01年…リーグ優勝へ向けた“神ってる”3試合
今季リーグ優勝に大きく貢献した鈴木。『優勝』という2文字を目指すなかで、過去にも奇跡的な展開で優勝を決めた、あるいは優勝をグッと引き寄せたといえるゲームがあった。ここでは、過去の“神ってた”試合をいくつか紹介したい。
89年のパリーグは、近鉄、西武、オリックスの三つ巴によるV争いが繰り広げられていた。同年10月12日、西武球場で行われた西武ライオンズ対近鉄バファローズのダブルヘッダーは、西武が近鉄に連勝すれば、オリックスの結果次第で優勝が決まる大一番。そこに立ちはだかったのが、近鉄のラルフ・ブライアントだ。
ブライアントはダブルヘッダー第1試合の4回表、0対4とリードを許していた場面で、郭泰源から右翼席へ46号ソロを放つ。これが奇跡の始まりだ。
6回表、1対5と再び4点差をつけられていた無死満塁の場面で、またも郭から47号同点満塁弾を右翼席へかっ飛ばす。さらに、5対5の同点で迎えた8回表、今度は2番手・渡辺久信から右翼ポール際への48号ソロ。マウンド上でがっくり膝をつく渡辺とは対照的に、両腕を挙げて歓喜するブライアント。この3発で近鉄が6対5と勝利する。
続く第2試合。第1打席に敬遠されて迎えたブライアントの第2打席。高山郁夫から中堅左へ49号ソロを放つ。ブライアントが見せた2試合をまたいでの4打数連続本塁打で、近鉄が14対4で連勝。これで勢いに乗った近鉄は、14日のダイエー戦(藤井寺)で9年ぶり3回目のリーグ優勝を決めた。前年の88年、あと一歩で優勝を逃した近鉄が雪辱を果たした。
00年、巨人が20世紀最後のリーグ優勝を決めた試合も劇的だった。
同年9月24日、東京ドームで行われた中日戦、0対4で迎えた9回裏だ。この年、広島からFAで移籍してきた江藤智が中日の守護神・ギャラードから同点の満塁弾を左中間席へ放り込む。
さらに続く二岡智宏が、右翼席へ4年ぶりのリーグ優勝を決めるソロ本塁打を放つという、奇跡の逆転劇。巨人が9回4点差を逆転した例は、1リーグ時代の46年のパシフィック戦以来54年ぶりのことで、逆転サヨナラでリーグ優勝を決めたのは初の快挙だった。
その翌年、パリーグ21世紀最初のリーグ優勝の瞬間も奇跡的だった。
01年、梨田昌孝監督率いる大阪近鉄バファローズは、同年9月26日のオリックス戦(大阪ドーム)の9回裏、2対5と3点差を追いかける無死満塁の場面で北川博敏が代打で登場。北川は、この年ルーキーで抑えを任せられた大久保勝信から「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」を放つ。優勝決定試合では史上初の幕切れとなった。
3試合とも、まさに“野球の神様”がもたらした「神ってる」試合であったといっていい。しかし、奇跡を呼び起こした背景には、選手自身のたゆまぬ努力があったからに他ならない。
リーグ優勝は達成できたが、日本シリーズでは敗れた広島。
レギュラーシーズンでは神懸かり的な活躍を見せた鈴木も、日本シリーズでは打率.222、0本塁打と悔しい結果に終わった。来季、鈴木が“神ってる”と言われなくなったその先に、広島33年ぶりの日本一が見えているのかもしれない。