遊撃手としては北條が上? 鳥谷の起用法は、来季阪神の大きな課題【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は来季の阪神の正遊撃手争いについてだ。
2016/12/08
実績十分だが、気がかりなここ数年の数字の衰え
複数メディアの報道によれば、阪神タイガースの金本知憲監督は、来季構想について「(外野の)糸井(嘉男)、福留(孝介)以外は白紙」と考えているようだ。
他のポジションはベテランも若手も、横一線の競争ということだが、そうなると注目されるのが鳥谷敬だ。
鳥谷は現在のNPBで最も実績のある遊撃手だ。
ベストナイン6回、ゴールデングラブにも4回輝いている。
しかしながら、ここ3年ほど、遊撃手としての能力に疑問符が打たれるようになってきた。それに加え、2016シーズンは打撃もいまひとつだった。
12球団の遊撃手の成績を比較してみよう。赤字はこの表での最高記録。太字はリーグトップ。OPSは出塁率+長打率、打撃の総合指標。RFは守備機会÷試合数。守備範囲の広さを示す。
遊撃手は二塁手、三塁手に比べて守備機会が多い上に、俊敏性を求められる難易度の高いポジションだ。
それだけに打撃には多少目をつぶっても、守備の名手を起用することが多いのだが、今のNPBには守備だけでなく、打撃でも貢献度の高い遊撃手がたくさんいる。「遊撃手豊作時代」と言ってもよいだろう。
またこの顔ぶれを見れば、遊撃手が固定できていない、あるいは遊撃手の成績が悪い球団は、クライマックスシリーズ進出が難しいことも見て取れる。
そんななかで、鳥谷の成績は他球団に比してはっきりと見劣りする。
打率、打点など、下位に低迷。リーグ屈指の選球眼は健在だが、その数字を加味しても打撃の総合指標であるOPSが.667とは全く物足りない。遊撃手であっても.700はクリアしたいところだ。
それに加えて気がかりなのは守備成績だ。118試合に遊撃手として出場している鳥谷は、守備機会=処理した打球の数が、442。1試合あたりの守備機会であるRFは3.75。これは、100試合以上出場した正遊撃手の中では極端に低い数字だ。
守備率は平均レベルも2016シーズンは、イージーゴロを取り損なうなど、これまでの鳥谷では考えられないような失策も目に付いた。
金本監督はこのため、8月中盤から北條を正遊撃手に固定し、9月以降は鳥谷を三塁に回した。2人の成績を比較しよう。