新人王に輝いた阪神・高山「理想の打撃は頭の中にある」。高い適応力で、進化しつづけるトラの安打製造機【2016年ブレイク選手】
即戦力ルーキーとしてドラフト1位で入団。開幕戦から1番左翼でスタメン出場するなど、「超変革」を体現する選手として、チームの世代交代を強く印象づけた。
2016/12/10
すべての成績に納得できていない
金本知憲新監督のもと「超変革」をスローガンに掲げた阪神タイガースの2016年は、セリーグ4位という結果に終わった。
それでも、スローガン通り多くの若手選手が台頭し、長年チームが抱えていた「世代交代」という課題の解消には、一筋の光が差し込んだ1年だったといえるだろう。
その中でも特に輝きを見せた選手が、ドラフト1位ルーキー・髙山俊だ。日大三高では主軸として全国制覇、明大では東京六大学のリーグ記録となる通算131安打を記録するなど、確かな実績を引っさげてプロ入りした髙山は、1年目から134試合に出場し、打率.275、8本塁打、65打点を記録。阪神の選手としては2007年の上園啓史以来9年ぶり、野手では2001年の赤星憲広以来15年ぶりの新人王に輝いた。
シーズンが終わり、チームが秋季練習に突入したタイミングで髙山に話を聞く機会があった。出来すぎともいえる1年目を振り返り、髙山はこともなげに「すべての成績に納得できていない」と言い放ったのが印象的だった。
新人王を獲得し、シーズン136安打は球団新人記録。それでも、満足できない。あくなき向上心の裏側には、髙山が持つひとつの「能力」がある。
適応力――。バットコントロールや天性の打撃センス……。長所を挙げればきりがないが、1年目からしっかりと結果を残した最大の要因は、そこにある。
阪神というチームは巨人同様、「特殊」な球団だ。熱狂的なファン、他球団とは比較にならないメディアの数……。そんなチームにドラフト1位で入団した髙山は、当然のごとくシーズン開幕前から大きな注目を集めることになる。
過去には今岡誠、的場寛壱、鳥谷敬、伊藤隼太など、阪神に「即戦力」といわれて入団した多くのドラフト1位野手が、1年目はその劇的な環境の変化についていけず、本来の実力を発揮できなかった。
しかし髙山は、前年の手術の影響もあり春季キャンプを二軍で過ごしながら、一軍昇格を果たしたオープン戦でいきなり打率.327の高打率を記録。シーズン開幕戦ではルーキーでは異例ともいえる「1番・左翼」でスタメン出場を果たした。
第1打席でいきなりプロ初安打を放ち、3戦目にはマルチ安打、6戦目には初の猛打賞と本塁打を記録するなど、開幕しばらくは打率3割をキープ。見事にプロの世界に適応して見せた。