パリーグ新人王・高梨裕稔(日本ハム)、大学時代の恩師が語る非凡なセンスと姿勢。「思考の整理が上手かった」
プロ3年目の今季、10勝2敗と飛躍を遂げ、チームの日本一獲得に貢献した高梨裕稔(日本ハム)。その高梨を発掘し、4年間の成長を間近で見てきた山梨学院大・伊藤彰監督(高梨在籍時はコーチ)が、当時の高梨の姿を振り返る。
2016/12/16
高木遊
常にひた向きな姿勢
華々しいデビューを飾った高梨だったが、そのまま上手くいくほど大学野球は甘くなく、秋は0勝4敗。そこで、監督の高橋はリーグ戦期間中だったが、高梨をベンチから外し強化練習をするよう命じた。それは同時に、高梨を今季の構想外とする宣告だったが、その後の姿を伊藤は強く覚えている。
「高橋監督の思いをしっかり感じ取っていたようです。決して腐ることなく、食らいつくようなイイ目をして、ポール間走などを黙々とやっていました」
さらに高橋とマンツーマンでフォームを作り直した高梨は、2年春からエース格へと成長。秋には6勝2敗で最多勝を獲得。チームをリーグ戦2位で初めて横浜市長杯(明治神宮大会関東地区代表決定戦)に導くと、翌秋も最多勝を獲得してリーグ戦2位で同大会出場に導いた。
4年時もリーグ優勝は果たせなかった高梨ではあったが、リーグ戦通算勝利を「26」にまで積み上げた。また、大学日本代表候補合宿やプロ・アマ交流戦の巨人戦で好投し、スカウト陣の評価をさらに高め、10月のドラフト会議では、日本ハムから4位指名を受けた。数年前まで無名の存在だった高梨は、幼い頃から思い描いていたプロ野球選手になる夢を叶えた。
また、そのひた向きな姿勢はチームに確かな財産を残し、翌春に山梨学院大はリーグ戦を初優勝し、全日本大学野球選手権に初出場。中でも、高梨と自主練習や私生活でも行動を共にし「高梨さんの気持ちの切り替え、メリハリがとても勉強になりました」と話すエース松尾勇太(現・鮮ど市場ゴールデンラークス)の好投が、その原動力となった。
伊藤は今でも「誰よりも早くグラウンドに来て、誰よりも遅くまで練習していた高梨の姿は、目に焼き付いています」と話し、「1年目より2年目、2年目より3年目と着実に成長している。ひた向きに、目の前のことを一生懸命やり続けた選手が伸びていくんだなと、あらためて感じました」と大きく頷いた。
高梨の原点には、思考の整理に基づいた目的意識と、常に前向きでどん欲な姿勢があった。そして、プロでも変わらぬその姿に恩師は目を細めている。