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ホークス戦力外の猪本「もっと上の景色を見たい」。閉ざされかけた夢をもう一度、千葉からの再出発

福岡ソフトバンクホークスから戦力外通告を受けていた猪本健太郎は、来季、千葉ロッテマリーンズでプレーする。

2016/12/15

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上杉あずさ



“チャンスに猪本あり”チームメイトからも愛された男

 元々、2008年の育成ドラフト4位で入団した猪本は、2010年のフレッシュオールスターゲームで育成選手史上初の優秀選手賞に輝くなど奮闘。2013年オフに支配下選手登録されるも、2015年シーズンまでの一軍成績は、3試合に出場し、3打数1安打。多くをファームで過ごした。それでも、前・三軍監督の石渡茂氏は、「猪本は、(育成から)よくここまでなったなと言われている」と成長率やここまでの頑張りを評価していた。

 今季は気持ちの面でも成長した。
 大事な場面で力まず打てるようになり、“チャンスに猪本あり”と結果が出た。6月9日の中日ドラゴンズ戦(ウリーグ)では、3塁打が出ればサイクル達成の5打数4安打、7月5日のオリックス・バファローズ戦(ウリーグ)では、本人も小学生以来とビックリの5打数5安打、7月24日の読売ジャイアンツ戦(ファーム交流)では、サヨナラホームランを放つなど、インパクトある活躍も多かった。「結果を意識しすぎず、ピッチャーに向かっていく姿勢が結果につながった」という。

 そんな活躍もあり、今年のファーム日本選手権では、ケガで出場できないにも関わらず、「ウエスタンリーグ優勝に貢献したから」とのことで、チームと共に宮崎入り。優勝したら胴上げすると言われていた。それは、みんなに愛される猪本のキャラクターもあってだろう。

 なかでも、「健太郎は弟みたいなもんだから」と可愛がるのは江川智晃。

 猪本がケガをした際、「アイツ励ますためにも、“打ってくるから”って話してきました」と、8月24日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で、一軍昇格後すぐのスタメン起用で先制弾を放った。「俺が一軍で活躍することで、自分もやれるんだとわかってほしい」ファームで悔しさを共にしてきたからこそ、猪本はじめ、後輩たちへの想いも熱い。

 さらに猪本の手術後、江川の練習着には、“一寸先はパラダイス”の文字。「ファンの方にもらった、健太郎の形見です(笑)」猪本の座右の銘が刻まれたオリジナルのTシャツで、猪本の想いも共に闘った。二人の絆は深い。

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 そんな2人も、これからは同じパリーグのライバルだ。

「ロッテでの登場曲、江川さんと同じの(BIG UP/湘南乃風)にしようかな~(笑)」

 これまでホークスでは、高倉健の『唐獅子牡丹』『男なら』を登場曲にしてきたどこか渋くて、男気溢れる猪本も、大好きな江川さんと離れることを寂しがった。江川の“ウエスタンリーグ100本塁打記念Tシャツ”を身にまといながら――。

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