ホークスの絶対的な強み、サファテはNPB球史に残る最強の守護神【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は最強の守護神・サファテについてだ。
2017/01/05
シーズン振り返ると、マーティンとサファテの成績は秀逸
昨季、10セーブ以上を挙げた投手はセ・パ両リーグで15人いる。9回を任されるクローザーは1球団1人が理想だが、北海道日本ハムファイターズ、東京ヤクルトスワローズ、千葉ロッテマリーンズは成績不振や退団などの理由で配置転換があり、複数人になっている。
これらクローザーの成績をいくつかの指標で比較してみよう。それぞれベスト10。
防御率とWHIP(1イニングあたり何人の走者を出したか)だ。
日本ハムのクリス・マーティンがずば抜けている。
セの覇者、広島東洋カープのクローザー中崎翔太は、防御率はこれに次ぐが、WHIPは5位。結果的に抑えたものの、走者は出していたのだ。安定感ではマーティンがずば抜けていた。
ここ数年随一の成績を残した福岡ソフトバンクホークスのデニス・サファテも今季は分が悪そうに見える。
次に被打率、SO/BB(奪三振数を与四球数で割った値、制球力を示す)を見てみよう。
やはりマーティンが1位、被打率.145は驚異的な数字。対戦する打者7人に1人強しか安打を許さなかった。
SO/BBもすごい数字になっている。奪三振数が与四球数よりも8倍以上多いのだ。
これは、先発投手を含めた中でもトップクラスだ。
4つの比較で分かるのは、2016年のクローザーの中ではマーティンがずば抜けていることと、それに次いでサファテが優秀なこと。
特にSO/BBの数値は、マーティン、サファテと他のクローザーとはレベルがはっきり違う。ともに走者をめったに出さないクローザーだったのだ。
マーティンは、昨季開幕時はセットアッパーだった。しかし本来のクローザーの増井浩俊が不振だったために、6月7日に初めてセーブを記録、クローザーとしての本格的な起用は6月19日からだった。
ここから21セーブをマークしたのだから、クローザーで開幕から起用されていれば、セーブ王サファテとデッドヒートを演じていたものと思われる。
しかしながらマーティンは、9月4日のオリックス戦で足首をねんざ、以後、1か月近く投げられなくなってしまった。
クローザー(10セーブ以上)の登板数と、登板数に占めるセーブ数の比率(SV率)はこのようになっている。
シーズン通しての活躍で見れば、やはりサファテが優れている。
昨季のサファテは7敗するなど、ここ数年では打ち込まれるケースが多かったが、それでもシーズンを通して一度も戦線離脱することなく投げぬき、レベルの高い火消しを行ったのだ。
プロ野球の世界では、2016年のマーティンのように、短期間、驚異的な投球をするクローザーは少なくない。
記憶に新しいところでは、2015年のDeNA山崎康晃なども目の覚めるような投球をした。しかし、それを長く続けることは至難の業だ。