西武、3年連続Bクラスの怪。打線はリーグ屈指、渡辺SD編成トップ就任で組織が変わる?【2016年通信簿】
西武は2015年に引き続き4位でフィニッシュ。64勝76敗3分で3年連続Bクラスとなった。かつての盟主も、今季は悪い所ばかりが目立ったシーズンとなった。 2015年にシーズン安打記録を樹立した秋山翔吾をはじめ、タイトルホルダーが続々と居並ぶが、投打ともに機能したとは言い難い。果たして、どこに問題があったのだろうか。
2016/12/30
先発陣の層の薄さを露呈
投手 2点
「不名誉な記録は何としても阻止したい」
シーズン終盤、西武投手陣のなかにあったプライドだ。不名誉な記録とは「規定投球回数をクリア0」だった。唯一可能性のあった菊池雄星に望みをかけ、かつての投手王国にとっての2016年は果てしなく低い目標でシーズンを終えようとしていた。
最終戦に菊池が6イニングを投げて規定投球回の143イニングに到達。面目躍如を果たしたが、「周囲がシラけるような形では達成したくなかった」という菊池のコメントは、本来、プロの選手が持つべきプライドだろう。
それほど、今季の西武投手陣は機能したとは言い難かった。
開幕前、田邊徳男監督を含め首脳陣は一つの賭けに出た。それは、開幕投手にエースの岸孝之ではなく、菊池雄星を立てるという選択をしたことだ。
理由は二つ。一つは将来のエース候補といわれた菊池を一本立ちさせること、もう一つは、次週の頭に対戦を控えていた福岡ソフトバンクホークス戦に岸を当てるという戦略的理由だ。
どちらの試合も制し、首脳陣の作戦は功を奏したかに見えた。しかし、この作戦の背景には投手陣の層の薄さが見え隠れしていた。シーズンの頭から戦略的ローテを組まなければいけないという状況にあったのだ。
今季のパは、シーズン序盤は5連戦が続いたため、菊池、十亀剣、バンヘッケン、岸、野上亮磨の並びでこなしていたが、6連戦が始まるとすぐに破たんした。
4月21日の北海道日本ハムファイターズ戦に菊池が中5日登板を果たすと、それに合わせて翌節の同24日の楽天戦で岸が中4日で登板。しかし、試合序盤で右足内転筋を痛めて降板し、長期の離脱を余儀なくされたのだ。
交流戦最終節で岸は復帰したが、入れ替わるように今度は菊池がわき腹を痛めて離脱。さらに、開幕から昨季10勝の十亀が不調、バンヘッケンは機能せず、野上は6回になると打ち込まれる悪癖が抜けなかった。
ルーキーの多和田真三郎、2年目の高橋光成や佐藤勇、郭俊麟などが度々抜擢されて、さらには外国人を緊急補強して穴を埋めようとしたが、機能することはなかった。
リリーフ陣もしかり。シーズン前から決まっていたのはセットアッパーを牧田和久、クローザーを増田達至だけで、そこに繋ぐ選手が武隈祥太しかいない。牧田には昭和を思わせるような3~6イニング継投を課すなど無理を強いた。結局、牧田も故障離脱した。
とどのつまりは、投手陣の層を厚くすることができず、特定の選手ばかり負担のかかるマネジメントしか施してこなかったのだ。
菊池が12勝、牧田が32HP、増田が28Sなど、選手は奮闘したが、チームとしてシーズンを戦う準備が整っていなかった。
チームからエースの岸が去る。ドラフトでは甲子園優勝投手の今井達也の指名獲得に成功するなど大成功に終わったが、来季はどれほど戦力に厚みを増すことができるのか。