スター階段を上り始めたカープ鈴木誠也。担当スカウトが明かす、ドラフト指名の舞台裏
2016年の新語・流行語大賞を受賞し、“神ってる男”と名付けられた広島・鈴木誠也。2017年はさらなる活躍が期待される。
2017/01/01
担当スカウトと選手
とても彼らしい言葉だった。
2016年の新語・流行語大賞を受賞し、“神ってる男”と名付けられた広島・鈴木誠也はオフのイベントでこう嘆いたそうだ。
「神ってるって、なんかマグレみたいに聞こえて嫌だった」
実力を見てほしい、そんな主張だった。
根っからの負けず嫌いにして野球が大好き。悔しいことがあればバットを振り、会話の中心は野球がほとんど。それが22歳にしてスター階段を上り始めた鈴木誠也という男である。
「移動中の新幹線の中でもずっと野球の話ですよ。ゲームはしないし、他のことに興味がないんです。何をしているかというと先輩バッターの動画を見ていたりするんです。入団したころは堂林のバッティングを見ていたので様子をうかがっていると、『どういう風に打てば、堂林さんみたいに右方向に長打が打てるんですかね』という話になる。本当に野球が好きなんですよ。あいつは」
そう語るのは広島の関東地区担当スカウトを務めて7年になる尾形佳紀である。
二松学舎大附高校時代の鈴木を追いかけてきた人物だ。
スカウトにとって入団に関わった選手は弟、あるいは年齢差によっては息子同然のようにかわいがるというのはよく聞く話だ。まだ38歳とスカウトにしては若いほうの尾形にしてみれば、鈴木はかわいい弟みたいな存在だ。
「入団会見のあと、その日の夜、ホテルでバットを振っていたんですから」
そう優しく担当選手のことについて語ることができるのも、鈴木が昨年ブレークしているからにほかならない。
しかし実際、鈴木の指名はそう容易に果たせたものではなかった。尾形にとっては、スカウト人生を賭けるくらいの覚悟が必要だった。