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スター階段を上り始めたカープ鈴木誠也。担当スカウトが明かす、ドラフト指名の舞台裏

2016年の新語・流行語大賞を受賞し、“神ってる男”と名付けられた広島・鈴木誠也。2017年はさらなる活躍が期待される。

2017/01/01

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ずば抜けていた身体能力

 二松学舎大附時代の鈴木が世間に名が知られるようになったのは1年生秋くらいのことだ。140キロを超えるストレートを投げる本格派投手として一躍注目を浴びた。

 尾形が鈴木を知ったのもこのころだった。
 幸いだったのは二松学舎大附の指揮官・市原勝人監督が、尾形の大学の先輩だったということだ。
 
「どのスカウトにも共通することだと思いますけど、先輩や後輩が担当選手のチームにいるところには行きやすくなりますよね。誠也の高校は先輩が監督をされていたんで、何度も行きましたし、いろんな話を聞かせてもらいました」
 
 投手としては「球が速く、コントロールが悪い」というのが当初の鈴木の印象だ。ときに外野を守った時もあり、強肩をみせていたが、高校時代の多くは「投手・鈴木」の印象だったという。
 
 ただ尾形は「投手・鈴木」を見つめながら、グラウンドでの立ち姿や走るその姿勢にただならぬものを感じていたのもまた事実だった。
 
「立ち姿、ユニフォーム姿からして魅力的だなと感じていたんです。身体全体がバネで出てきているみたいで、持っている潜在能力が違うなと。バッティング面では、僕が見ている試合での誠也はサードゴロばっかりだったんですけど、ベンチに引き上げていく時の走る姿勢が印象に残りましたね。ストライドが広くて、これぞアスリートみたいな姿でね。本当にいい選手だなぁって思いました」
 
 尾形は足しげく練習グラウンドに通い、鈴木をみれば見るほど魅力に取りつかれていったという。投げる球が速く、俊足、そしてスイングスピードがけた外れ。高校3年の夏に都大会で敗れて、鈴木が高校野球を引退すると、尾形の肚はほとんど決まっていた。「絶対に獲りたい」。そう思っていたのだという。
 
 しかし、ここからが尾形にとってイバラの道だった。
 というのも、全国的に無名な鈴木をどうやって指名にこぎつけるか、球団を説得しなければならないからである。
 
 当時、スカウト部長の判断では「鈴木は4位の選手」と下されていたから、他球団に先に指名されるのではないかという危惧が尾形にあった。

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