MLBの基準なら、ソフトバンク柳田悠岐は2016年もMVPクラス【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は柳田悠岐についてだ。
2016/12/31
Getty Images
攻守にわたる総合的な評価でMVPに選出されたトラウト
2016年、MLBアメリカンリーグのMVPは、ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトだった。2回目の受賞だが、トラウトは打撃三冠のタイトルは獲っていない。チームは西地区4位、優勝はおろかポストシーズンにも進出していない。
日本の基準ではMVPは優勝チームの中心選手か、タイトルホルダーが選出されるのが原則だ。しかしMLBでは全く違う基準で選ばれているのだ。
トラウトは何が優れていたのか。アリーグのタイトルホルダーとの比較で見ていこう。
上段の数字は2016年の記録、下段はリーグ順位だ。
トラウトと本塁打王マーク・トラムボ(ボルティモア・オリオールズ)、打点王エドウィン・エンカーナシオン(トロント・ブルージェイズ)、デービット・オティーズ(ボストン・レッドソックス)、首位打者ホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)との比較。
トラウトは、得点が1位、安打数、本塁打数、打点は10位以下。しかし盗塁は2位、四球数は1位、その結果、出塁率が1位、打者の総合指標とされるOPS(出塁率+長打率)は2位だ。
トランボ、エンカルナシオンは打率が低いため、出塁率も長打率も上がらない。
アルトゥーベは安打数も1位だが、長打率は10位以下だ。
この比較では、トラウトはオティーズにならぶ高いレベルの成績を残したことがわかる。
しかしオティーズはDHであり、守備では全く貢献していない。トラウトは、中堅手としてリーグ2位の371守備機会、リーグ4位タイの7補殺を記録している。外野手としても優秀だ。
打撃に加えて守備での評価で、トラウトはMVPに選ばれた。優勝やタイトルではなく、純粋に成績で選出されたのだ。
攻守のあらゆるデータを集積したWARではトラウトは10.6(Baseball Reference版)でアリーグ1位だった。
なおMLBでは投手がMVPに選ばれることはほとんどない。投手の最高栄誉はサイ・ヤング賞であり、MVPは打者のものという通念がある。