日本のショートストップは、なぜ、メジャーで通用しないのか。異国を知る者たちが証言する「確実にアウトにするための守備」の盲点【野球考#1】
2017年のプロ野球はシーズンインに向け、選手たちは続々と自主トレーニングに励んでいる。シーズン開幕がいまから待ち遠しいが、ベースボールチャンネルでは、シーズン中とは異なる視点から野球を考察していきたい。その名も「野球考」。第1回目は野球の“花形”ともいわれるショートストップについて、中南米のアカデミーを深く取材するスポーツライター中島大輔氏に日本人ショートストップの課題、メジャーリーガーを多く輩出する中南米の選手との違いについて考察してもらった。(2017年1月11日配信分、再掲載)
2020/04/21
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環境の違いはチャレンジを奨励させているかどうか
2013年限りでロッテを退団し、メジャー移籍を目指してアメリカの独立リーグでプレーした渡辺俊介(現・新日鐵住金かずさマジックのコーチ兼投手)は、シーズンオフになるとベネズエラのウインターリーグでプレーした。当地で特に印象に残ったことを聞くと、真っ先に挙げたのが「内野手のレベルが高い」だった。
「体が強いので、ゲッツーをとるスピードがある。ちょっとでもアウトをとれる確率があると思ったら、アウトをとりに行くんですよね。大事をとって、という考えはなくて」
捕ってから早く投げる。そしてアウトにできる確率があれば、チャレンジをする。こうした姿勢はベネズエラ人だけでなく、中南米選手に共通した点と言える。
2016年6月7日の西武戦で巨人は4回裏、メキシコ出身の名手ルイス・クルーズがセカンドの守備でエラーを記録した。表の攻撃で2対1と逆転した直後のこの回、1死1塁で鬼﨑裕司がセカンド正面にゴロを放った。クルーズは前に出て捕球を試み、グラブ操作の流れで1塁走者の森にタッチを狙ったが、捕球できずに1、3塁とピンチが広がった。この後に3点を奪われて逆転負けしたことで、記者席の多くがクルーズに厳しい視線を向けていた。
しかしクルーズが狙い通りに併殺をとれていれば、1点リードで切り抜けられた場面だ。先発投手は巨人が田口麗斗、西武が菊池雄星。相手に分があるのは否めない一方、併殺でチェンジになれば、攻撃に流れを引き寄せられる。両先発の力関係を考えれば田口が1点を守り切るのは容易でなく、追加点を狙いたいところだ。結果的には手痛いエラーとなったが、クルーズの意図を汲んだ見方も存在していい。チャレンジしてのミスを咎めてばかりいると、誰もチャレンジできない環境になってしまうからである。
「中南米の選手は、育っている環境が違いますからね」
井口に「日本人も練習次第でラテン選手たちのように守れるのだろうか」と聞くと、そんな答えが返ってきた。ベネズエラだけでなく、ドミニカ共和国、近年ショートでの躍進が目立つオランダ領キュラソー、そしてキューバの少年たちは、総じてデコボコのグラウンドで練習していた。そうやってイレギュラーに慣れ、ハンドリングが上達していく側面はもちろん大きい。
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しかし、カリブ海諸国から優秀なショートが出続ける環境とは、果たしてそれだけだろうか。井口が希望を捨てないのは、まだできる余地があると考えているからではないだろうか。
それは筆者自身の見方でもある。チャレンジを奨励する環境も、中南米のショートを大きく育てる背景の一つだ。
日本にもまだ打てる手があるのに、鼻からあきらめてチャレンジしないのは実にもったいない。
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