元巨人・クロマティへ抱いた選手の不信感――「グラウンドに出ると人が変わる。野球を知らない監督」【『サムライ・ベアーズ』の戦い#2】
皆さんは、かつて巨人で活躍したクロマティ氏が、アメリカの独立リーグで日本人だけのチームの指揮官として戦っていたことをご存じだろうか。そのチームは『ジャパン・サムライ・ベアーズ』と名づけられた。
2017/01/19
阿佐智
グラウンドに出ると人が変わる
ある時などは、ワンポイントで左ピッチャーをマウンドに送ったのだが、相手バッターがスイッチヒッターで、投球練習を見るや否や右打席に立ったこともあったという。
「それ見て、クロマティ、『Oh, Shit!(クソッ)』って大声あげてまたキレるんですよ。選手はみんなあーあって。ベンチの誰もがそんなこと分かってましたからね。だって、そんなの相手チームのメンバー表見れば簡単に分かりますから。かわいそうなのはマウンドに立たされたピッチャーですよ。その手のことは本当に多かったですね」
クロマティが率いたこの日本人チームは、90試合を戦い、33勝57敗という断トツの最下位で2005年のシーズンを終えた。無名の選手の寄せ集めというチーム編成では仕方なかった部分もあるが、長坂の目には指揮官の指導力、求心力のなさも大きかったと映る。
「監督が違っていれば、正直もう少しましな成績残せたでしょうね。実際、シーズンの最後の最後に監督が代わったんですよ。そのあとはチームの一体感も出たし、なによりもみんな楽しそうにプレーしてました。僕はシーズンの半ばに合流したんですが、その頃のチームの雰囲気は最低でした。みんなおびえてましたから。いつ彼に怒られるかってね。それ見て僕、思ったんです。あのチームの大多数は、『体育会』的な日本の野球に自分を合わせることができなかった連中なんです。なのにあれじゃ、彼らが嫌で辞めてきた日本の野球がそこにあるんじゃないのって」
ただし、グラウンドを離れれば、横暴な指揮官ともウマがあったと長坂はいう。あれから十数年が経った今でも長坂はクロマティとフェイスブックで連絡を取り合う。
「でも、やっぱり現場ではうまくいきませんでしたね。彼、フィールドに出ると人が変わるんですよ」