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クロマティ監督の采配以前の根本的な問題――「チーム自体がプロレベルではなかった」【『サムライ・ベアーズ』の戦い#3】

皆さんは、かつて巨人で活躍したクロマティが、アメリカの独立リーグで日本人だけのチームの指揮官として戦っていたことをご存じだろうか。そのチームは『ジャパン・サムライ・ベアーズ』と名づけられた。

2017/01/20

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阿佐智



ベンチの人数を気にせず選手をカットしたクロマティ

 シーズンが始まり、数試合を消化して明らかになったことは、戦力の圧倒的な不足だった。

 シーズンが深まるにつれて、クロマティの怒りは、暴言だけでは収まらなくなっていった。開幕してひと月ほど経つと、成績不振も手伝いクロマティは見切りをつけた選手に次々と戦力外通告をしていったのだ。時には、試合中のベンチで、ナインの目の前でそれをしたこともあったという。

 彼らと入れ替わりに、長坂秀樹のようなプロ経験者(編集部注:米独立リーグや日本の独立リーグでプレー経験のある選手)が何人か加入した。最終的にシーズン終盤は、ぎりぎりの人数で戦った。

 リリースの嵐が吹き始めた当初、プロの投手として未熟だった上野は戦力外のリストに入っていた。ドラフト候補生であった上野は、本来ならば、シーズン途中にリリースされるような素材ではなかった。実際、彼はこの2005年のシーズンが終わるとメジャーのスカウトから誘いを受け、テキサス・レンジャーズとマイナー契約を結んでいる。しかし、経験の浅さから結果を残せない場面が続くと、クロマティの堪忍袋の緒は切れかけた。

「俺たち必死で止めたんだよ。あいつは経験積ませれば必ず良くなるからって」

 投手コーチだった堀井恒雄(元横浜大洋ホエールズ、ロッテオリオンズ)は、参謀として過ごしたあの夏を振り返る。

「とにかくクロマティは、試合になると頭に血がのぼる。勝ちたいのは分かるんだけどね。だから、試合後ホテルに帰ってからとか、次の日に意見するんです。その時は彼も冷静で、こちらの意見も受け入れてくれました。『分かった。じゃあ次はお前に任すよ』って」

 しかし、言葉もその場限りだった。一晩明けると、クロマティは選手をどんどんクビにしていった。

「ヘタなのは、確かにその通りなんだけど、シーズンを戦っていくには、やっぱりベンチの人数も必要なんですよ。彼にはそれが分からなかった」

 シーズン半ば前に始まったクロマティによる「粛清」の結果、チームのメンバーの半数ほどは入れ替わった。しかし、この程度のことはアメリカのマイナーでは当たり前のことである。
 だから、主力選手たちは総じてクロマティの指揮官としての資質に疑問を感じながらも、あの戦力ならメンバーの入れ替えも仕方なかったという認識もまた持ち合わせていた。

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