なぜ日本には絶対的クローザーがいないのか。“勝利の方程式”と“タフさ重視”の是非【小宮山悟の眼】
WBCでの侍ジャパン。1つの争点になりそうなのがクローザーだ。一体誰を起用するのが最適なのか議論があるが、そもそもの問題として、日本プロ野球には絶対的なクローザーの不在がある。その原因は何か。
2017/02/01
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“勝利の方程式”の是非。メジャーが方程式に固執しない理由
それは日本球界とメジャーリーグの起用法の違いにあると思う。メジャーリーグでは、ブルペン投手の起用に関して、投手ごとにたとえば「3連投まで」という明確な方針があって、それはプレーオフを含むシーズン終盤の重要な試合でなければぶれることはない。
ところが日本の場合、試合終盤をリードで迎えると、必ずと言っていいほど、いわゆる「勝利の方程式」の継投で逃げ切りを図る傾向にある。もちろん「勝てる試合を勝ち切る」ことは、大事だ。しかし、あまりにも目の前の勝利だけにこだわりすぎると、セットアッパーやクローザーの勤続疲労を招き、長い目で見てチーム力を低下させてしまうだろう。
メジャーリーグにも当然、「勝利の方程式」のような逃げ切りパターンの継投策はある。ただ、先ほども言ったように、起用方針に反すれば、方程式を崩して起用する場合がほとんどだ。
たとえば、先発投手が7回まで抑え、セットアッパーを挟んでリードで9回を迎えたとき、クローザーが3連投していたため、別の投手がマウンドに上ったとしよう。万が一、この場面で逆転を許し負けてしまったら……日本球界だとチームの内紛にも発展する大事になりかねない。チームの白星と先発投手の勝ち星が消えてしまうのだから、当然「なぜクローザーを登板させないのだ」という意見も出てくるだろう。
しかしメジャーリーグではそうはならない。それは、選手の契約内容が日本とは異なるからだ。まず、クローザーが登板過多だということは、チームの調子が良く連勝しているということだから、その日の1試合くらい落としても、チームとしてそれほど大きな問題ではない。
確かに先発投手の勝利投手の権利は消えてしまうが、先発投手の多くは、投球回数を上位にしてインセンティブの契約を結んでいるので、7回を無事に抑えたという結果は、その試合でのノルマは十分に果たせたと捉えることができるのだ。