なぜ日本には絶対的クローザーがいないのか。“勝利の方程式”と“タフさ重視”の是非【小宮山悟の眼】
WBCでの侍ジャパン。1つの争点になりそうなのがクローザーだ。一体誰を起用するのが最適なのか議論があるが、そもそもの問題として、日本プロ野球には絶対的なクローザーの不在がある。その原因は何か。
2017/02/01
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クローザー大谷への期待感。全試合で主導権を握ることも可能
これは持論だが、クローザーとは、コーチの指導により成長した投手が就くようなポジションではない。チームや先発投手の勝ち星を背負って投げるという経験は大切だが、基本的には資質とか才能による部分が大きいと思う。私がチーム編成をする立場なら、一番「すごい球」を投げる投手をクローザーに抜擢するだろう。
現在の日本球界の中で「すごい球」といえば、大谷翔平の名前が浮かぶ。小久保監督が「先発で起用する」と明言しているので、WBCでクローザーを務める可能性は低いだろうが、所属の日本ハムではどうだろうか。私は密かに今季、クローザー大谷が誕生するのではないかと考えている。
野手として全143試合にDHで出場し、セーブシチュエーションの9回だけマウンドに上る。今季、セーブ王と打撃のタイトルを同時に獲得すれば、二刀流にさらに箔がつくだろう。
以前にもこの連載で触れたが、個人的には、大谷が全試合で外野守備に就いて、試合の中盤以降に2度3度訪れるピンチの場面に、ワンポイントとして登板するのが、究極の二刀流の起用法だと思っている。そうすれば、すべての試合で大谷を擁するチームが主導権を握れるだろう。
ワンポイント起用に比べて、クローザーの場合、投手としてのチームへの貢献度が下がる可能性がある。チームの成績によっては、1週間登板しない場合もあるからだ。だったら、1週間に一度、先発として確実に役割を果たしてもらった方が、チームにとって戦力になるという考え方も出てくるかもしれない。
昨年のクライマックスシリーズ・ファイナルステージでクローザー大谷は一度だけ実現している。当時、日本ハムはクローザーが不在でブルペンのやりくりに苦労していた。そういう理由からのクローザー起用だったわけだが、日本ハムのフロントは戦略に長けているので、つい、「試験的な意味合いもあったのでは……」と勘ぐってしまう。もしその通りなら、相当にしたたかなチーム編成ビジョンだと言えるだろう。
果たしてクローザー大谷は実現するのか。今季は、そんな密かな期待を抱きながら、シーズン開幕を楽しみに迎えたい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。