「一歩進むな。半歩遅れるな」岩下大輝、勝負の3年目。名伯楽から授かった金言【マリーンズファーム通信#33】
プロ3年目を迎える岩下大輝。長いリハビリ生活を経て、ようやくプロ野球選手として第一歩を踏み出した。
2017/02/04
千葉ロッテマリーンズ
背番号29の姿を手本にせよ
感触を確かめるように丁寧に投げた。岩下大輝投手は2月3日、石垣島キャンプで初めてプルペンに入った。立ち投げでストレートを力強く投じた46球。背番号と同じ数だけ投げた。
「やっぱり投げないとなにも始まりませんからね。この2年間、ほとんど投げていない。危機感はあります」
プロ1年目の一昨年は二軍でわずか2試合の出場にとどまった。そのオフに右肘内側側副靭帯再建術を受け、昨年はシーズンを棒に振った。キャンプではチームが元気よく全体練習を行うのを横目にリハビリを行うしかない日々を送った。
「めちゃ、きつかったです。とりわけ自分よりも年下の選手がバンバン投げている姿を見るのは辛かった。自分は投げられない。だから人の倍は走ると思いました」
地道なリハビリ生活。愚痴を口に出すこともなく前向きに取り組んだ。そんな若者に当時、二軍投手コーチだった小谷正勝コーチ(現ジャイアンツ巡回投手コーチ)がよく声をかけてくれた。孫ほど歳の離れた岩下を名伯楽は気にかけてくれた。それは星稜高校からドラフト3位で入団した大型右腕の潜在能力を高く評価していた証だ。「焦るなよ」。口酸っぱく言われた。そしてボソッとアドバイスを受けた。
「オイ。オマエはタイプ的には西野(勇士)に似ている。フォームも体型もな。せっかく目の前にそんな先輩がいるのだから、その姿をよく見ておけよ。どんな練習をしているか。どんな投げ方をしているか。研究をしておけよ。投げることができなくても、それはできるだろ」
ハッとさせられた。
その言葉通り昨春のキャンプでは全体練習に合流できない悔しさの中、一軍投手、とりわけ西野勇士投手の投げる姿を追っかけ続けた。ずっと背番号「29」のマウンドでの立ち振る舞いを観察していた。シーズン中もリハビリが続く中でテレビ中継や動画を見てはマリーンズのストッパーとして活躍する西野に、未来の自分の姿を思い描いた。7月に投球練習を再開。10月に宮崎で行われたフェニックスリーグで実戦復帰をすると、3試合に登板。ストレートは140キロを計測した。長身から投げ下ろされたそのボールは、球速以上に伸びとキレがあった。