日本ハムが狙う“育成と勝利の両立”。どこで「差」を作るか。王者のチーム作りの心髄【データで解く野球の真実】
競技において相手を上回るためには、特に勝敗に影響を与える部分で、効果的に差をつくる必要がある。2016年、ペナントレースでは福岡ソフトバンクホークスとの激闘を制し、日本シリーズでは勢いに乗る広島東洋カープを退け日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズも、ライバルに対し確実に差をつくり勝利していた。いかに差をつくったのかに着目すると、日本ハムの戦力像を把握することができる。そこから、連覇を狙うチャンピオンが2017年にどんな戦いをしようとしているのかを探ってみたい。
2017/02/11
先発投手陣と外野で予想される若手の集中起用は吉と出るか?
日本ハムフロントは、オフに入ると早々と動きを見せた。11月2日には先発投手として103.1イニングにわたってマウンドに立った吉川光夫、若手の外野手の石川慎吾との交換で、外野手の大田泰示と投手の公文克彦を読売ジャイアンツより獲得した。
7日にはFA権を取得した陽と会談を行い、陽は権利の行使を表明。退団が決定的になった。15日には、先発と救援でフル回転した外国人右腕、アンソニー・バースの退団も決まった。
吉川、陽については日本一の歓喜の直後に訪れた、チームの功労者の退団という事態に驚きの声も挙がったが、日本ハムのスタンスは明確になったようにも映った。「若手への機会提供を図りながら、順位も目指せる」という算段があったのだろう。
さて、吉川は103.1イニング、バースは75.2イニングにわたって先発マウンドに立った。2016年はシーズン途中に先発に回ったが、2017年は救援に戻ると伝えられている増井が先発投手として担った57.1イニングも合わせると230イニングを超える。これをどう埋めるのだろうか。
主に米マイナー・リーグでプレーしてきたエドウィン・エスコバー、村田透という投手を獲得しており、彼らがその役割の候補にも見えるが、日本ハムが描くベストシナリオは、2016年は先発で85イニングを担った高梨、同じく77イニングを担った加藤貴之、その他若手が中心となってイニングを伸ばしていくというものだろう。
増井の先発適性がある程度確認され、2016年は139イニングの登板に止まった大谷を投手に比重を移して起用するというオプションも当然ある。その上でエスコバーと村田を加えた状況は、リスクを管理しながら、若手先発投手に機会を与えられる環境に映る。バックを守る野手の高い守備力も、若手たちを支えるだろう。
そして陽が抜けるセンターは、岡や淺間が入ることになりそうだ。攻撃力があまり伸びていない日本ハムの外野では、陽が担ったセンターは唯一プラスを計上していたが、ここがマイナスに転じる可能性もある。
ただ岡が25歳、淺間は20歳と若く育成段階であることを考えれば、出場機会を与えることで成績を伸ばす可能性はある。また陽は守備でマイナスを計上していたが、若い両者であればある程度守備を通じてプラスを稼ぎ、打撃の不利を埋めダメージの軽減を図れる可能性もある。