日本ハムが狙う“育成と勝利の両立”。どこで「差」を作るか。王者のチーム作りの心髄【データで解く野球の真実】
競技において相手を上回るためには、特に勝敗に影響を与える部分で、効果的に差をつくる必要がある。2016年、ペナントレースでは福岡ソフトバンクホークスとの激闘を制し、日本シリーズでは勢いに乗る広島東洋カープを退け日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズも、ライバルに対し確実に差をつくり勝利していた。いかに差をつくったのかに着目すると、日本ハムの戦力像を把握することができる。そこから、連覇を狙うチャンピオンが2017年にどんな戦いをしようとしているのかを探ってみたい。
2017/02/11
大谷の“三刀流”は弱点解消のための秘策? 気になる中島のコンディション
とはいっても、陽の退団で予想される外野の攻撃力の低下は、現段階では日本ハムにとってのリスクと言わざるをえない。栗山監督は昨秋、大谷を外野守備に就かせる“三刀流”の夢を語っていたが、単なる夢ではなくチームの課題を見越しての提案であったようにも映る。
巨人からの大田の獲得も、陽の退団によって失われる長打力の担い手としてのポテンシャルに期待したものだろう。主砲の中田翔も今オフにはFA権を取得するとみられ、移籍となればチームの長打力の低下はさらに進行する。大田の獲得は、そうした状況に対する備えの一環と思われる。
先発投手やセンターなどの外野で、若手に経験を積ませる余地を見いだせているのは、他球団に対し大きな差をつくりあげているサードや指名打者、投手陣全体の質の高さ、そして堅実にリーグ平均を超えてきているその他のポジションの選手たちの働きがあるからだ。
逆に言えば、ここが崩れると若手に出場機会を与え、育てながら結果を出していく日本ハム流のサイクルはつくれなくなる。育成か、結果か、という二者択一に陥ってしまう。
そうした面でやや不安を感じるのは、二遊間の若手選手の突き上げが少し弱いことだ。ショートを守る中島らがケガなどで離脱した場合、おそらく攻守で小さくないマイナスが出てしまうだろう。中島は、2015年は1272.2イニング、2016年は1284イニングに出場しており、かなり負荷の高い起用が続いている。そこも含めて気がかりだ。
セカンドも田中賢介は間もなく36歳に達し、パフォーマンスについては維持が精一杯といったところだろう。
今シーズン出場機会を得ると思われる若い外野手たちが、ブレイクを果たし日本ハムの外野を強みに変えるような働きを見せられれば、今度は二遊間で、選手育成を図れる状況ができるだろう。日本ハムが次のステップに進めるかはそこにかかっている。今シーズン、注目したいポイントだ。
※攻撃は長打力と出塁力双方を評価するwOBA(weighted On-Base Average)を、投球は奪三振や与四死球などから算出する推定防御率であるFIP(Fielding Independent Pitching)、守備は打球の飛んだゾーンや強さ別の処理状況などの情報を使って算出するUZR(Ultimate Zone Rating)などを使っている。