今だから話る、始球式の舞台裏 2015年も中畑監督についていきます!【音楽と野球 歌うベイスターズ女子、トミタ栞さんインタビュー②】
『野球を〝エンターテインメント〟としても楽しめるものに――』。ベースボールチャンネルが掲げるテーマのひとつだ。今回はそれを実現すべく、音楽シーンのベイスターズ女子代表として、シンガーソングライターのトミタ栞さんに登場してもらった。昨年、始球式(7月5日・阪神戦(横浜スタジアム))で見事な投球を見せ、中畑監督をも驚かせた栞さん。ベイスターズとの出会いは? 魅力は? さらに始球式での感動&熱血秘話(!?)も公開。
2015/01/22
株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ
始球式のために3カ月間キャッチボールで特訓!
――昨年7月5日(土)横浜スタジアムでの始球式のピッチングを拝見しましたが、ノーバウンドだったし、フォームもカッコよかったです。
「私、昔からすごく球技が苦手で、スポーツテストのソフトボール投げが9メートルくらいだったんです。だからお話を頂いた時は、『大丈夫か、おい!』となって、元甲子園球児のマネージャーさんと練習の日々がスタートしました。まずは、グローブとボールを下北沢で買ったんですけど、グローブが硬くてうまく動かせないんですよね。だから、たたいて柔らかくして、とりあえずグローブと球を近づけてはめることから始めました。そしたらパシパシって音がなってくるんですよ。マネージャーさんにも『いいね、音がよくなってきた』って誉められたりして、なんかお父さんと娘みたいな(笑)。それで近所の空き地でキャッチボールをするようになって、距離もだんだん長くしていきましたね」
――近くにいいコーチがいらしたんですね。どれくらい前から練習していたんですか?
「約3カ月前かな。1日2時間くらいやる日もありました。スケジュール帳を見たら『打ち合わせ』→『キャッチボール』→『打ち合わせ』みたいな日もあって、『なんだこれ!?』って思いながらもやっていました。筋肉痛が絶えなかったですね。最終的に4球に1球は届くかなという感じになりました」
――そして当日を迎えたわけですが。
「とにかく緊張と不安でいっぱいでした。始球式って、神聖な場所じゃないですか。まず、トミタ栞自体、ここにいていいものか――。いかにも球技ができなそうな女の子が投げてしまっていいものか――。だけど、いろいろ考えても本番はやってくるわけです。まあ、歌にリハーサルがあるように、本番前に練習できるだろうと思っていたんですが……」
――できなかった!?
「できなかったですね(笑)。だけどブルペンで投げることはできて、なおかつ井納投手に教えて頂けました。それはありがたかったんですけど、ブルペンで急に1球も届かなくなっちゃたんです。1球も届かないまま本番を迎えることになってしまって……。井納投手は『大丈夫、大丈夫』って言ってくださったんですけど、『その〝大丈夫〟に応えられない』ってパニックになって。本当はブルペンに入れてもらえるだけでもすごいことなんですよね。だけど、その感動も味わえないくらい、届かなくなったことが怖かったんです。『ワンバンでもいいから変な方向に行かなければいい』『女の子だから前に出て投げても大丈夫』って、言ってもらったんですけど、自分の中ではその選択肢はなかったですね」
――そうしているうちに呼ばれて?
「DB.スターマンとDB.キララちゃんと一緒にマウンドに向かいました。そこで、ひと呼吸置いてから投げようと思ったんですけど、すぐに投げるほうにかかってしまって……。そうしたら、手を上げたあとの動作が一瞬わからなくなってしまったんです。あれ、次は何の動き? 足? 手?って、手を上げたまま考えていたら、『おおお』って歓声が大きくなっていくのがわかったんです。私が止まっているから〝タメ〟を作っているように思われているんだ、どうしようって。でも成り行きに任せて投げたら届きました(笑)」