“大谷騒動”で見えた侍Jの組織的弱さ。サッカーに学び真の代表強化を【小宮山悟の眼】
ワールド・ベースボール・クラシックのメンバーから大谷翔平が外れたのは記憶に新しい。しかし、辞退報道を巡ってはやや不可解な部分があった。指揮を執る小久保裕紀監督がその事実を把握していなかったのだ。なぜ、このような事態が起きたのか。その裏に何があったのかを小宮山悟氏が解説する。
2017/02/20
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日本ハムは事前に大谷が辞退する可能性があることを伝えていた?
北海道日本ハムファイターズの大谷翔平投手がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のメンバーを辞退した。
昨年の日本シリーズで痛めた足首の故障が癒えておらず、WBCの開幕には間に合わないと判断したようだ。
しかし、大谷の辞退報道を巡っては不可解な部分もある。侍JAPANの小久保裕紀監督がその状況を把握していなかったのだ。サッカー日本代表なら起きないことだと思うが、果たして、この一件は何が問題で起きてしまったのか。少し整理していきたい。
今回は日本ハムが『ファイターズの選手として、大谷はWBCでは投げられない』というオフィシャルなアナウンスをしたが、第一に考えられるのは各球団とNPBとの間での認識の違い。
通常であれば、大谷のケガの状態が良くなくて、辞退するのが「WBC日本代表」というくくりであるのなら、WBCを統括している部署からオフィシャルに発表するべきこと。しかし、どこが窓口になるのかが明確になっておらず、そのことによって今回の件が起きたのではないか。
ここで重要な点を見落としてはならない。
この件が、仮に日本ハムが正しい段取りを経て「何時何分に発表します」とNPB側にアナウンスしていたとしたならば、その連絡が小久保監督の耳に届いていないのは重大な問題である。
今回、小久保監督は一報を受けて、寝耳に水のような反応だったが、日本ハムからの報告がどこかで止まってしまっていたのなら、一大事である。組織の問題だと言わざるを得ない。
一部では日本ハム側が勝手に発表したのではないかという声もあるが、日本ハムがそのような不義理をする球団とは考えにくい。事前にNPBに連絡しているはずだ。もちろん、ロースターの締め切り等々もあるので、一刻も早く発表しなければいけない事情はあったにせよ、「こういう可能性がありますよ」という事前告知、ないしは水面下での根回しはしているはず。これには私なりの根拠がある。
少々うがった見方をすれば、なぜ日本ハムはWBCメンバー投手陣の中で、大谷だけをアリゾナキャンプに連れて行ったのか。宮西尚生投手や増井浩俊投手は日本に残った。
アリゾナの地には、記者陣は日本ハム担当しかいない。その状況で最悪な発表をせざるを得なくなることを踏まえて、大谷を連れて行ったという可能性はある。日本ハムの選手としてアリゾナに連れていっていたと考えれば、つじつまが合う。
つまり、辞退の可能性を事前にNPB側に伝えていたと考えられる。今回の一件はNPB側の人間のなかに、12球団からの情報を吸い上げる立場の人、いわば代表選手の進捗情報を伝える係がいたにもかかわらず、思うように機能しなかった可能性が高いと言える。もしそうなら、組織として問題がある。