楽天のサンチェスと広島のグスマンに期待! 新外国人野手を占うポイントは、マイナーでの打率とTB/H【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、前回に続き、2015年から12球団の加入した新外国人投手の品定め(野手編)だ。
2015/01/24
助っ人を見ると、左打ちの強打者が減ってきた
先週に続いて新外国人選手の品定めをする。今回は野手編。8人の新外国人を〝査定〟してみよう。
実は外国人野手の「合格ライン」は昔よりもかなり下がっている。
20年ほど前であれば、外国人野手は中軸を打ち、3割30本塁打100打点をマークして当たり前という感じだったが、今は打率.280、15本、60打点程度でも契約がつながる選手が結構いる。また打力ではなく、守備力が評価される選手もいる。
日米の実力差が縮まったのかもしれない。
また外国人枠が広がって野手は3人まで出場できるようになったことも大きいだろう。 多少成績が悪くても「保険」でキープすることも多いのだ。そういう選手は年俸も数千万円~1億円程度。NPBの平均より少し高い程度だ。大きな期待もしない代わりに、高額の年俸も払わない。
ホセ・フェルナンデス(NPBで11年通算.282、206本塁打)、フリオ・ズレータ(6年通算.279、145本塁打)、現役ではDeNAのアーロム・バルディリス(7年通算.270、80本塁打)、オリックスのエステバン・ヘルマン(3年通算.279、14本塁打)などがそれだ。
野手についても、投手同様に最近活躍した外国人選手のMLB、マイナーでの成績を参考にして品定めをする。その基準は、こうした「平凡な外国人選手」ではなく、昔ながらのタイトル争いに絡むレベルということにしたい。
依然としてそのレベルの選手もいる。
21世紀に入ってから好成績を残した代表的な外国人選手のNPB、MLB、マイナーでの成績を見てみよう。TB/Hは、平均塁打で、塁打数を安打数で割った数値だ。平均して「何塁打を打っているか」つまり端的な長打力を表す数値となる。1.7を超えれば長距離打者だ。年齢は来日時点。
まず気が付くのは、タフィ・ローズを除いて右投げ右打ちだということ。昔はランディ・バース、ウォーレン・クロマティなどのように左打ちの強打者が活躍したが、最近は少ない。NPBの投手のレベルが上がり、特に左打者に対する厳しい攻めが多くなったことが影響しているのかもしれない。
例によってMLBでの成績は全く当てにならない。タイロン・ウッズのようにMLBに昇格できなかった選手もいる。MLBで記録が残る選手も、好成績を残した選手は少ない。
注目すべきは、やはりマイナーリーグの数字。特に打率とTB/Hだ。
NPBに来て活躍している選手の多くは、打率、TB/Hの数値が高い。つまりボールをしっかりとらえて安打を量産する能力と、ボールを遠くへ飛ばす能力のいずれか、あるいは両方が高い。実のところ、この数値が高い選手はなかなか日本にやってこないのだ。
マット・マートンはこの中では唯一「出世前」の選手だ。
MLBでも好成績を上げていたが、レギュラーを外れたために阪神にやってきた。彼はTB/Hは低いが、打率は抜群だ。
その後の活躍を見ても、もう少し我慢していれば、MLBでもスターになった可能性は高いと思われる。
タフィ・ローズは唯一の左打者。マイナー時代は俊足のリードオフマンだった。日本へやってきて「大化け」したのだ。こういう選手もいるから予断を許さない。
平均すると来日時点で29.6歳、右打者、マイナーで打率.280、TB/H1.66ということになる。