高津氏が改革したブルペンの肩作り。“日本流”の是非、侍J救援陣はいかに疲労を軽減すべきか
侍ジャパンの2017ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)初戦まであと5日。今回、侍スタッフにブルペンコーチは置かれておらず、村田善則バッテリーコーチが兼任する。ナショナルチームのスタッフは、救援陣に対する疲労軽減策をどのように考えているのだろうか。
2017/03/02
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救援投手の登板過多に配慮が必要
WBCに出場する侍ジャパンが2月28日から連夜、CPBL選抜チャイニーズ・タイペイと対戦した。
初戦はCPBL選抜に被安打17を浴び、5-8で敗戦。侍ジャパンに不安がよぎるなか、2戦目は1-9と快勝し、本戦に向けて、明るい兆しが見え始めた。
そんな代表チームの活躍を楽しみにしながら、「世界一奪還」と「選手の未来」という一大テーマに対して、どう折り合いをつけていくかを非常に注目している。
WBCの結果がどう転ぼうと、選手生命が脅かされてしまうようなことは極力あってはいけない。衝突プレーなど避けられないケガは仕方ないにしても、防げる故障はなるべく少なくしたい。
特に気がかりなのは、救援投手陣への配慮だ。
昨今、救援投手の登板過多が目立っているからだ。
NPBの球団では、筆者の取材で知り得た限りでは一昨年のセ・リーグ覇者である東京ヤクルトスワローズと昨季日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズが救援投手陣の疲労軽減策を講じている。
両チームにはそれぞれ、海外でのプレー経験者がおり、彼らの手腕によるところが大きい。
その人物とは高津臣吾2軍監督と吉井理人1軍投手コーチだ。
高津氏は、MLBをはじめ、韓国・台湾など3か国でのプレー経験があり、吉井氏もMLBで活躍した。
ご存知のように、MLBは投手の登板過多に対してかなりデリケートな部分がある。
先発投手の球数はおよそ100球を前後に決められており、救援陣は連投に制限がつく。1年間を通じてのパフォーマンスや選手が長く活躍するための環境づくりは日本も参考にしたいほどだ。
その経験を高津氏と吉井氏は実践している。
高津氏がヤクルトで取り入れたのが、ブルペンではあまり球を投げない調整法だ。
日本の球団は多くの場合、救援投手は登板のあるなしに関わらず、一度は肩を作る。
その後、アンダーシャツなどを着替えた後、試合展開によって、2度目の肩を作る。
ゲームというのは常に動くものだから、日によって試合展開は変わる。そのため、2度だけで肩を作って出番がくるケースもあるが、3度、4度と繰り替えなさなければいけないことはザラにある。
今回の侍ジャパンに選出されている岡田俊哉投手(中日ドラゴンズ)が「(何度も肩を作って準備をすることは)中継ぎの投手は当然のことだと思います」と話していたことがあったが、日本の一般常識と言っていいだろう。
高津氏はそこに疑義を投げかけた。
シカゴ・ホワイトソックスに所属していた頃、開幕から24試合連続無失点を記録するなどの活躍を見せた高津氏は、メジャーの調整法に合わせるのに苦労した一方、その意義を感じたという。