高津氏が改革したブルペンの肩作り。“日本流”の是非、侍J救援陣はいかに疲労を軽減すべきか
侍ジャパンの2017ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)初戦まであと5日。今回、侍スタッフにブルペンコーチは置かれておらず、村田善則バッテリーコーチが兼任する。ナショナルチームのスタッフは、救援陣に対する疲労軽減策をどのように考えているのだろうか。
2017/03/02
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ブルペンで余計な球を投げない
高津氏が1軍投手コーチだった頃、こんな話をしている。
「メジャーのブルペンはバッター3人くらいで登板できる肩を作らないといけないんです。例えば、日本は登板があるなしに関わらず、一度ピッチング練習をして準備する。それから着替えて、次の電話が鳴った時に、10~20球を投げればマウンドに上がれるような態勢をとるんですけど、米国は1回の電話で、その時が1番打者なら『4番に合わせてくれ』という形で指示が来る。つまり、その3人で肩を作らないといけない。だから、最初に投げる球から、2~30球で肩を作るということになります。このやり方になじんでいくと、余計なボールを投げなくなります。(2015年の優勝したときは)秋吉(亮)や(ローガン・)オンドルセクが70試合を投げても、最後までへばらなかったのは、その調整法が上手くいったからと思っています」
ヤクルトのブルペン陣はみなこの手法で肩を作る術を習得した。
侍ジャパンのクローザー候補に挙げられている秋吉がかつてこんな話をしている。
「登板までのウォーミングアップが2回作りだったのが1回作りになりました。最初は不安でした。急に投げるのがどんな感じになるのか怖かったんですけど、次第に慣れてきた。すると、やはり疲れが残らないので楽でした。1年間で70試合も投げていたら、疲れてくるのは当然だし、どこかで球数を減らしていかないと、たとえ1年は投げられても、僕らには次の年もその先もシーズンはある。球数を少なくしていかないと長い野球人生にはならないんじゃないかなと思います」
実際、侍ジャパンの合宿でも、秋吉は数少ない投げ込みで調整しているようだ。
「球数少なく登板に入っていくのが僕のパターン」と独自の調整を貫いている。
一方、日本ハムはブルペンで肩を作る回数を減らしている。
日本ハムは小刻みに継投をしていくチームとして知られているが、だからといって試合展開によって、何度も肩を作り直していてはシーズンは持たない。そのための策だ。
吉井コーチが、現職に復帰するまでの頃に自身の理念としてこのスタイルのことについて話していたことがあった。
「3回以上、肩を作り直すようなときは、選手の疲労を考え、登板するべきではない」
そして、前職のソフトバンクコーチの頃にはコーチの果たすべき役目をこう語っている。
「選手の疲労面をコーチが考えるのは当たり前のことだと思います。選手には野球人生がある。長く野球を続けてもらうためには必要なことだと思います」