【中島大輔 One~この1球、1打席をクローズアップ】「配球を読まずに、来た球を打つ!」。ライオンズ期待の星、ルーキー・森友哉の〝捕手らしからぬ〟打撃思考
今季、投手陣の不調が響き、下位に低迷している埼玉西武ライオンズ。その中で来季への明るい兆しがあるとするならば、ルーキー・森友哉の存在だ。後半戦から1軍に昇格した森は、26試合ながらも4本塁打をマーク。.366のハイアベレージを残しており、チームは今季残り試合、森に先発を任せて英才教育を行う。かつて高校時代に打撃を評価されて入団してきた選手でも、多くは1年目はプロのボールに戸惑うケースが多い。森は、なぜここまでの成績を残せているのだろうか?
2014/09/18
あえて、配球を読もうとしない
その一撃に、森友哉の非凡さが凝縮されていた。
9月9日に行われた千葉ロッテ戦、1点を追いかける9回表の1死二塁。一打同点のチャンスで、岡田雅利の打順で代打に森が送られる。西野勇士が初球に投じたフォークを振り抜くと、打球はバックスクリーン右に飛び込んだ。
「初球から振ろうと思っていたので、思い切って打てたと思います」
一時逆転となる4号2ランを森はそう振り返ったが、シンプルなこのコメントには彼の凄みがふたつ含まれている。「初球から振る」、そして「思い切って打てた」という点だ。
森が「初球から振る」と決めて実際に打ちにいけた理由は、「配球を読んで打つボールを決める」のではなく、普段から「来たボールを打つ」と考えていることにある。
配球を読んで打つのか、来たボールを打つのかは、コインの表と裏のような関係だ。相手の投じる球種がわかれば、打者は狙い球を絞って思い切り振り抜くことができる。一方で読みがはずれた場合、タイミングが狂って自分のスイングをさせてもらえない。
「読んで打つ」タイプの代表格が、日本球界に「データ」という概念を定着させた野村克也氏だ。殊勲打を放った打者がヒーローインタビューで「来た球を打ちました」と口にするたび、野村氏は「ウソつけよと思う」と話していたことがある。捕手の野村氏は打席で相手の配球を読み、「次はこういう理由で真っすぐ、あるいは変化球」と根拠を持って狙い球を絞っていた。それが歴代通算2位の2901安打を放った秘訣だった。
一方、森は自分自身について、「基本、読んで打たない人。ストライクに来た球を打つイメージ」という。その理由は、「読んで違う球が来たら、全然打てません。それだったら、ストライクに来た球を積極的に打ちにいこうという考えです」。
大阪桐蔭の先輩である浅村栄斗、アスレチックス傘下の中島裕之も同じ考え方をしている。自身も2000本安打を放ち、コーチとしてふたりを育てた土井正博氏も同じスタンスで、「来た球を打つのが打撃の理想型。無理せんでも、バットが素直に出ているということだから」と話していた。