2月1日から紅白戦!? 6勤1休……落合式から考える『春季キャンプ』の意味【横尾弘一「野球のミカタ」】
キャンプイン前日となった。そもそも春季キャンプとは何のためにあるのだろうか。当時、中日ドラゴンズの監督だった落合博満GMは、就任1年目、2月1日のキャンプ初日に紅白戦を実施して、大きな注目を浴びた。(2015年1月31日配信分、再掲載)
2015/01/31
「○勤○休」の意味は?
いよいよ2月1日から、プロ12球団の春季キャンプから一斉に始まる。
多くのファンが現地まで足を運び、メディアも連日、様々な角度からレポートを送ることで、ペナントレース開幕に向けたムードが大いに高まる。
そうして当たり前のように実施されているが、そもそも春季キャンプは何のためにあるのか。そんな話を十余年前、現役を退いたばかりの落合博満と交わしたことがある。
「春のキャンプというのは、あくまでペナントレースに向けた準備。ルーキーや新外国人ら、自分の力を見せながら環境に慣れていかなければならない選手もいるけれど、基本的には鍛えることより調整するのが主たる目的なんだよ。プロの場合、鍛えるのは秋のキャンプ。実戦を終えたばかりで温まっている体に、徹底的に技術を叩き込む。万が一、ケガや故障をしたってオフの間に治せるからね。言葉は悪いけど、選手を壊してもいいのが秋、絶対に壊しちゃいけないのが春のキャンプなんだ」
では、「○勤○休」と示される練習スケジュールには、どういう意図や意味があるのだろう。
「それは監督が何日ごとにゴルフをしたいかで決まるんじゃない?」
そんな冗談を飛ばした落合は、こう続けた。
「日曜や祝日はファンが大勢来るから休めないなど、プロ野球のキャンプは“自分たちが仕事の準備をするもの”から“ファンに見せるもの”に変わってしまった部分もある。ここで今一度、キャンプの意味を考えなくちゃいけないよな」
そう言っていた落合は、2004年に中日の監督に就任すると、2月1日のキャンプ初日に紅白戦を実施するとぶち上げた。そして、大きな注目を浴びる中で行われた試合は実に締まった内容だった。
選手たちも「明日が開幕でも、うちは大丈夫ですね」と語り、そのシーズンを見事に制する。
最も印象的だったのは、初めて全138試合に出場し、リードオフに定着して攻守に貢献した荒木雅博の言葉だった。
「ゴールデングラブ賞までいただきましたが、シーズンを戦っている間、対処できない打球がひとつもなかった。飛んできた打球を見た瞬間、『あ、これはあの時のだ』って、すべてキャンプのノックで見た打球だったんです。2月1日に試合ができるよう仕上げておけば、1カ月でいろいろなことを試せる。苦しいペナント終盤でも体力が落ちなかったし、シーズンを終えてみて、やはりキャンプの過ごし方が大きかったと実感しています」