WBC奮闘の侍ジャパン、超一流のプロによる「大人の高校野球」だった【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#47】
第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は残念ながら準決勝敗退となった侍ジャパン。超一流のプロ野球選手が全力でプレーする姿に心打たれたはずだ。
2017/03/28
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大会中により結束力が強くなっていった
当コラムなりにWBC総括を試みておきたい。もちろん当コラムはタイトルからして「えのきどいちろうのファイターズチャンネル」である。基本的に毎回、ファイターズネタを扱っている。当然、WBCのコラムでもファイターズ勢を中心に書くことになりそうなものだが、それがなかなか難しいことに気づいた。
読者はどういう目線でWBCを見つめただろうか。僕は(ラジオ出演の折などに)今回の侍ジャパンを「大人の高校野球」という風に呼んでいた。「大人」がやる「高校野球」だ。「超一流のプロ」がやる「高校野球」だ。
彼らは普段、当たり前だが「プロ野球」をやっている。プロ野球は面白いことに負けることをあらかじめ織り込んだリーグ戦だ。負けていい。143試合143勝ってチームは存在しない。大人っぽい世界観だ。「うまく負ける」とか「先を見据えた布石を打つ」といった戦略が当たり前にあり得る。明日なき疾走では具合いが悪い。
が、WBCはちょっと違う。「超一流のプロ」がいっぱいいっぱいの戦いをする。一心につなごうとする。一投一打にベンチが大声援を送る。
特に「史上最弱」と揶揄された今回の日本代表は一つにまとまる力が強かった。大リーガーが青木宣親しかいない分、全員が結束し、同じ方向を向いていた。僕は過去のWBC日本代表チームにも深い愛着があるが、今回の「小久保JAPAN」がいちばん好きかもしれない。大会中にチームがぐんぐんまとまり、強くなっていく感じがした。
チームの結束に関しては「大リーガーが青木宣親しかいない」のほかに、もうひとつ要因があったに違いない。大谷翔平の不参加だ。侍JAPANの目玉が大会前に消えた。これはチームの主戦投手が1枚欠けた以上の意味を持った。メディアや広告代理店は経済効果的な損失を考えた。大リーグ関係者は明らかに意気消沈していた。大谷辞退の発表ををめぐっては日本ハム球団と侍JAPAN事務局とのコミニケーション不足が露呈し(小久保久保監督が「寝耳に水」とコメントする)、ファンからすると何だかわからないことになった。個人的な思い出としてはあの時期、僕は逢う人逢う人から「大谷はどうなってるんですか?」と声をかけられ、謝ってばかりいた感じだ。「すいません、骨棘(こっきょく)ってことなので手術するんだと思いますよ」と言っていた。
侍JAPANの面々には口には出さずとも「大谷がいないから負けたと言われたくない」という想いがあったらしい。チームはグッとひとつになり、「大人の高校野球」っぽい雰囲気が生じた。