大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



WBC奮闘の侍ジャパン、超一流のプロによる「大人の高校野球」だった【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#47】

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は残念ながら準決勝敗退となった侍ジャパン。超一流のプロ野球選手が全力でプレーする姿に心打たれたはずだ。

2017/03/28

text By

photo

Getty Images



寄せ集めのスター集団から日本の代表へ

 人気沸騰のトリガーになったのは、もしかしたら「幻のホームラン」騒動じゃなかったか。3月7日、1次ラウンド初戦(キューバ戦)、4回裏2死二塁で山田哲人の放った大飛球をレフトスタンド最前列の少年がグラブを出して捕球してしまう。捕球した位置がフェンス手前だったとされ、大飛球は2塁打と判定された。これにSNSが反応した。少年は「クソガキ」と非難を浴び、あと一歩で日本版の「スティーブ・バートマン事件」(03年MLBナリーグ・チャンピオンシップで起きたファウルフライ捕球妨害事件、およびメディアスクラム案件)に発展しかねないものがあった。
 
 それを救ったのが当の山田哲人だった。「僕はぜんぜん気にしていない。だから野球を嫌いにならずに、またグラブを持って応援に来てほしい」。メディアを通し、温かい言葉が向けられた。いいバッターは皆、少年と約束する。皆、野球はいいなとあらためて思った。
 
 僕はそのとき、針が振り切れるのを感じたのだ。これまでもマウンドに国旗を立てられたり、デービッドソン球審に西岡のタッチアップを取ってもらえなかったり、様々なエポックで針が振り切れた。侍JAPANはその瞬間、寄せ集めのスター集団のようなものでなく、パブリックな存在に転じた。本当に日本の代表になった。
 
 チームは筒香嘉智の風格、小林誠司の成長に引っ張られて東京ラウンドを全勝で終える(あ、そうだ、こういうのは時がたつと忘れられてしまうから書き記しておこう。2次ラウンド最終戦のイスラエル戦、日本は「4失点までなら敗れても1位通過」という面白い条件だった。「大人の高校野球」云々とは矛盾する話のようだが、僕はもし、この試合「9回を迎えて0対4で負けている」状況だった場合、延長で大敗する可能性を考慮して負けを確定させに行っただろうかと考えた。あくまで想像だが、たぶんあくまで勝ちに行き、その結果、大敗し準決勝に進めなくても一般の支持を得られた、ぐらいの感じか。すごく野球っぽいのだ。サッカーのW杯ならグループリーグ最終戦、「上手に負ける」チームが出てもおかしくないと思う)。
 
 僕は中田翔のホームランや増井、宮西の好投に歓喜し、他球団の選手(特にパの名選手だち)をムキになって応援した。千賀や平野、松井、牧田が初見で打てるわけない。オレたち普段どんなに苦労してるか。この選手たちは野球ファンの誇りなんだ。我ながら笑ったのは、松田の「熱男!」が初めて心から頼もしく思えたことだ。

1 2 3


error: Content is protected !!